中は、映画館内をわざと古くした風に作られていて、窓も日光もなく、青白いランプが照らされているところなどいかにもだ。

中にはもう、雰囲気だけで怯えているカップルや家族連れもいる。子供はけろっとしているのに、その親が及び腰になっている。なんて一組もあって面白い。

さてさて、ここらでいっちょ「きゃーこわーい!」と行きましょうかね!

「きゃっ……」

「こわい」

「え?」今、何か聞こえたような。

振り向くと、愛しい恋人の、真っ白になった顔がある。まじまじ眺めていると、こちらに気づいた彼氏が、ふるふる、首を振り始めた。

「こ、こわい。なんかこわい。思ってたよりこわい」

「え、ちょ。大丈夫?豪星くん」

「う、うん。大丈夫だと思って入ったんですけど、お化け屋敷みたいなアトラクションかなって思ってて、その、お化け屋敷も別の場所で入ったことあるんで、平気だろうって思ったんですけど、いや、あの時は平気だったけど、なんていうか、此処は……ちょっと耐えられない」

「え?まじで?」そんなに?

ええ……。そうか。そんなに怖いなら、残念だけどやめとこうかな。

この調子じゃ、相手がきゃーこわーい!を受け止めるどころじゃなさそうだし。

「それじゃ、やめて……」おく?途中退場する?と、聞く直前。

「はーい。優先券をお持ちの方、前にどうぞー」

従業員の案内で、列が一気に動き出す。列はどんどんと前に進み、猫汰も豪星も否応なしに押し流された。そして、とうとう、退出するタイミングを失い、二人揃ってアトラクションの席についてしまった。彼氏と言えば……真っ白から真っ青になっている。余程怖いのだろう。しかし、こんな顔も新鮮っていうか可愛いっていうか。

席が動き出し、アトラクションが始まると。

「うわー!」「ひぃいいい!」「ぎゃー!」一気に騒がしくなった。主に隣が。「へー……そんなに怖いんだ」あまりに怯えるので、つい感心してしまう。

暫くして、アトラクションが終わり、降車すると。

「猫汰さん!」出口のロビーでいきなり抱き着かれて驚いた。

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