「ねえ、ダーリン。今日三者面談でしょ?お父様くるの?」小首を傾げる猫汰に、「くるらしいですよ」あっさり答えると、「意外!めんどいとか言いそうなのに!」案の定、笑われた。
「俺もそう思ったんですけどね。息子の三者面談に、一回は行ってみたかったそうですよ」
「ああ。なるほど。レジャー感覚ね?納得した」そこ、納得するところかな……。まあいいけど。
「猫汰さんも今日でしたよね。お兄さんがいらっしゃるんですか?」
「そうだよー。俺はねぇ、5時から面談なんだけど、ダーリンは?」
「俺は4時半からなので、もう間もなくですね。そろそろ父親が連絡をくれると思うんですけど……」
言った傍から携帯が震える。通話を押して耳にあてると、『ごうせいくーん』父親の声が通って抜けた。
「父さん。着いた?」
『着いたついた。近くのコンビニからかけてる。校門行くから迎えにきてー』
「分かった。ちょっと待ってて」席を立つと。「おとーさまだった?」すかさず、猫汰が相手を尋ねた。
「はい。父親でした。校門で落ち合うことになりましたので、俺はこれで失礼しますね」
「俺、ヒマだからついてって良い?」
「構いませんけど……」
「やったね!じゃあいこー!」飛び上がった猫汰が、いそいそカバンを片づけて、豪星の隣に立った。
支度を済ませ、しばらく、ああだこうだ、主に猫汰がしゃべりながら歩き、校門につくと。「あ、父さん」見知った人を見つけて。
「……なにそのスーツ!」思わず叫んだ。
「すげー!白スーツだ!」隣で猫汰がげらげら笑い始める。
「どう?シャツがワインレッドでお洒落でしょ?」父親が、一回転して自慢を始めた。
「豪星君がおめかしして来いって言うから、頑張っちゃったー!」
「頑張る場所がちがうから!!」
「なんでダーリン?おとーさまのスーツかっこいいよー!」
「でしょでしょー?猫ちゃん分かってるー!」
「ところでおとーさま。話は変わるけど、詩織ちゃんが、一時間後にくるんだよねー?」
「……これでひとつお願いします」さっと青ざめた父親が、懐から紙袋を取り出し、渡す。
紙袋を覗くなり、「おっけー!」猫汰の顔が桃色に染まった。
「それじゃあ二人とも!俺はこれで退散するね!ばいばーい!三者面談がんばってー!」
猫汰が手を振り、駆け出して行く。その背を見送ったあと。
「……猫ちゃんめ。あざとさが増して来たな」父親が、軽く舌打ちを撃つ。
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