しかし、猫汰の今日一番の本番はここからだった。むしろこれ乗る為に来たと言っても過言ではない。それが、お金とあひるの映画館だ。
「お金とあひる」とは、がめついあひる投資家が、様々な人を巻き込みながら金儲けをたくらむ。という連作アニメーションだ。映画にもなっている。
そして、ラブリーパークでのアトラクションでは、あひるがお金儲けに巻き込もうとしたとある映画館オーナーが、実は死者である事が分かり、スクリーンに取り込まれ、殺されそうになるのを逃げる。というコンセプトだ。
実際の動きといえば、椅子の機械に乗って、スクリーンに取り込まれた風に演出され、落ちるの揺れるのを楽しむよう作られている。
去年新設されたこのアトラクションは、元のアニメーションの人気も相まって、今では園内一の人気アトラクションとなっている。なにが人気かと言えば、あひるのにく可愛らしい出番に、激しく落ちる絶叫設計。加えて、ホラー映画も真っ青な恐怖演出である。初めに乗った客は、男でも泣き叫ぶと大絶賛だ。
ちなみに、俺は5回程のった事あるけど、怖くなかった。
どれだけホラーで派手に驚かされても、たかが作り物じゃねーかという感じで、兄と乗ったときも、お互い「なかなか面白かったね」と言ったくらいである。
だがしかし。これに乗りたい理由は人気だから。面白かったから。だけではない。
一番の目的は……怖がった振りしてイチャイチャしたいのだ!
誰でも一回は夢見るよね!?好きな人が隣にいて!薄暗い建物の中で!やだーきゃーこわい!って、抱き着く場面なんて絶対夢見るよね!?
今日はそれがしたかったんだよ!是が非でもしたかったの!行く前から!むしろプラン考える前からしたかったんだよ!だからこれからが本番なの!
まあ、絶叫だから途中は抱き着けないけど、降りたら速攻で抱き着けばいいの!
ダーリンの薄い胸板へ!顔面を!すりつける!
きゃー!いいよいいよ!中々ないよ!?
膨らむ期待、高鳴る鼓動。それらを思い切り押し込みながら、豪星を連れてアトラクションへ向かう。
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