「すっごい時間使っちゃったね」

「ほんとですね……最後のあれ、あれだけが分からなかった。正直、猫汰さんいなかったら俺、多分リタイアしてましたよ」

「そんなことないよ。途中で、地図をさかさまにしてみるところなんて豪星くんの機転だったんじゃん。あれ、なるほど!って舌巻いたよ。……あ、もうお金とあひるの映画館乗れる時間になったね」

スマホで時刻を確認した猫汰が、優先券を取り出して時間を見比べる。優先券には、午後4時の印字が、スマホには4時10分の表示がされていた。

「そろそろ行こうか」

「はい。分かりました」

来た道を戻り、一番初めに来たお金とあひるの映画館へ向かう。

お金とあひるの映画館は猫汰の言う通りとても人気らしく、戻ってきた頃には長蛇の列が出来ていた。待ち時間には、大きく180分と書かれている。

180分というと、60分が1時間だから……3時間!?

「え!これ、並ぶとそんなに時間かかるんですか!?」

「そうだよー。だから朝いちで取りにいったの」

「な、なるほど……、ええと、これがあれば直ぐに入れるんですね?」

「そうそう。入口違うから気を付けてね。さ、いこ?」

「はい……」それにしても、本当にすごい列だな。

そんなに面白いアトラクションなのかな?俺、お金とあひるは見た事がないから、どんな感じで作ってあるのかも、なにが人気なのかも、さっぱり分からないな。外観とか雰囲気がお化け屋敷?っぽいから、怖い感じのアトラクションかな?

まあ、中に入って確かめればいいんだけど。



猫汰は今日、幸せだった。

どれだけ幸せかと言えば、今すぐ人類が滅亡してもそれはそれで構わないくらい。なにが幸せかと言えば、一日中彼氏とぴったりくっついて、ごはんを食べたり語らったり、アトラクションに乗ったりできることが最高に幸せだった。もう、明日には結婚式を挙げても良い。結婚が人生の墓場というならば、自力で天国にしてみせよう。くらい、ちょっと訳が分からないほど幸せだった。

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