「ちが!ちがう!そんなつもりありませんー!」
「知ってんよ!ばーか!自覚ないのが、一番むかつくんだよ!豪星くんの、ハゲ!童貞!」
「ちょ!童貞は関係ないでしょ!……うわー!回し過ぎですってば!猫汰さんー!」
「うるさーい!」
回転が回転を呼び、竜巻のごとくカップを揺らす。ぐるぐるぐるぐる、目が回っている内に終了のベルが鳴り、半ばずり落ちるようにして降車した。
「ぎもぢわるい……っ」入口にへたりこむと、それ以上動くことが出来なくなってしまう。乗り降りを塞ぐ形で力尽きた豪星を、「いくよ」猫汰が強引に引きずっていく。暫くして、ベンチに寝かされると、いよいよこと切れた。
「吐きそう……」
「豪星くんが悪いんじゃん。そこでちょっとは反省してよね」
うう……。なにが悪いのかさっぱり分からない。
というか、猫汰さん。なんであれだけ回ってたのに、けろっとした顔してるんだろう。
「俺、三半規管めっちゃ強いから、どれだけ揺れても酔わないんだよね」
心の中を読まれた……。
動けない豪星を他所に、猫汰がすたすたどこかへ行ってしまう。目で追うのもつらく、しばらくベンチであおむけに転がっていると。
「はい。お茶買ってきたよ」冷えたボトルを頬に押し当てられ、ひやりとしたた。「ありがとうございます……」だいぶ酔いがさめてきたところに、冷たいお茶が心地いい。
喉を鳴らして、ひたすらお茶を飲んでいると、「……ごめんね」隣に座った猫汰が、小さな声で詫びてきた。
「ちょっとやりすぎちゃった」
「いえ。もう大丈夫です」
「そう?」
「はい。でも、しばらくは激しくない乗り物が良いです……」
「うん。分かった」
猫汰が次に向かったのは、洞穴風に作られた建物の、謎解きアトラクションだった。なるほど。これなら揺れないし落ちないし、気がまぎれるし、探している内に吐き気も収まりそうだ。
と、甘く見ていた謎解きアトラクションが思いのほか難しく、更に面白かったので、あれこれ猫汰と散策している内に随分時間を割いてしまった。
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