7月中旬。初夏が過ぎ、教室が蒸し暑くだれる。とある日の放課後。

「はいダーリン。プリント来てるよ」猫汰が駆け寄り、豪星に一枚の紙を手渡す。「あ、すみません。ありがとうございます」礼を言って受け取ると、「三者面談のお知らせだって」猫汰が、紙の中身を指さした。

「……三者面談」三者面談。とは、三者、つまり、生徒、教師、親が対面して面談する、学校行事の一環だ。

知らせは、毎年夏休み前に配布される。豪星も例外なく受け取ってはいたが。

……うーん。



「ねえ父さん。こんど三者面談があるんだけど、どうする?」

帰宅してすぐ、ごろごろしていた父親に貰ったばかりのプリントを差し出すと。

「三者面談?」案の定、きょとんとされた。

それもそのはず。三者面談。というものを、中嶋家ではこれまでにした事がないからだ。その理由は、引っ越しに蒸発に……まあ、いわゆる諸事情からだ。

だが、今回はめずらしく、父親が三者面談予定日まで在宅していそうなので一応報告してみた。どうせ一蹴されるだろうが……。

「なにそれ面白そう!いくいくー!」

あれ?意外に乗り気だな。

「豪星君の三者面談行くとか初めてだね!」

「そうだね……」

「一回行ってみたかったんだよねー!いやあ、たまには在宅してみるもんだ!」

「父親としてそのセリフどうなの。……まあいいや。じゃあ父さん。来るんならその恰好だけどうにかしてきてね」

さすがに、甚平やパーカーで面談へ行くのは問題があるだろう。せめてシャツくらいそろえてほしいものだ。

「え?三者面談ってドレスコードがあるの?」

「あるでしょ。スーツとかシャツとか」

「へー。スーツとかシャツね。おっけー!まかせて!」父親が、ノリノリで答えるのに、一抹の不安を覚える。

「………まともな格好できてね?」恐る恐る頼むも。「おっけー!」返答は軽いままだ。

………。

ほんとうに大丈夫かな、これ。

言わないほうが良かったんじゃ……。



三者面談当日。授業が終わり、放課後のチャイムと放送が学校中に鳴り響く。

教材をまとめて片づけていると、不意に腕のはしから汗が落ちた。

つと顔を背けて窓を見れば、さんさんとした陽が目に照りついた。ああ、夏が真ん中まできたなぁと、改めて思う。

「だーりーん」窓の外を見ている内に、猫汰が近づいてきた。いつも通り、勝手に隣の椅子を借りて、にこにこ見つめて来る。

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