---思ってもみなかった事件が起きたのは、その日の昼時の事だった。

何時も通り、猫汰と席をくっつけて、何時も通り、猫汰に豪星の分の弁当を貰って、その包みを開き(今日は、豪星が土産に渡した調味料セットを、早速ぶっこんだおにぎりがメインだった。感想を聞かれ、五種類の花火が口の中で同時に爆ぜたような味です、と答えたら、詩織ちゃんと一緒だね!と、けらけら笑われた。…彼の兄の舌は、弟と同じ仕組みなのか?ふと気になった)順応性の高くなってきた咥内でそれをしばしば片付けた後、いかに、土産を貰って嬉しかったかを、猫汰が散々、あげた本人に語り尽くしていた、最中。

豪星が鞄から茶色の包みを取り出し、中身を取り出した際、猫汰がきょとんと目を丸くさせた。

豪星が取り出したのは、なんの変哲も無い紙袋に入った、なんの変哲も無い蒸しパンケーキだった。

食後のおやつを口にしようとした豪星の、その口元と、掌の蒸しパンを、猫汰がきょとんとしたまま見比べる。

「…ダーリン、そのおやつなに?手作りっぽいけど…」

猫汰が気にしたのは、それがおやつである事ではなく、手作りである事だった。

ああ、と頷き、食べようとしていたおやつを机に下ろす。

「これ、昨日龍児君がくれまして、美味しかったのでお昼も食べようと思って」

持ってきました、と、最後まで言い切る前に、猫汰が「あ?」と、媚のとれた声を喉の奥から絞り出した。

その低さと唐突さに、びくっと、笑顔のまま凍り付く。

「は?昨日?りゅーちゃんに会ったっけ?休みも放課後もほとんど俺といたし、昨日のお昼ご飯の時だって、来なかったよね?」

龍児は入学してから、昼ご飯を持っては豪星たちの教室に入り込み、勝手に豪星たちと昼ご飯を共にする事が多かったのだが、最近は、同じ教室の双子に追いかけ回されているのか、来ない日もぽつぽつ出来るようになった。

昨日は、まさにそんな日だったので、猫汰が疑問に思うのもおかしくはなかった。

「は、はい、うちまで来てくれて…」

説明を付け加える為、「家まで」と、昨日の下校後の事を話すと、ますます猫汰の雰囲気が剣呑になった。

相手の疑問を解消している筈なのに、何故か問い詰められているような気分だ。

「なんで?」

「それは、えっと、俺の誕生日だったんで、わざわざ龍児君がプレゼントを持ってきてくれたんですけど」

「…は?ちょっと待って、もう一回言って?」

「え?その、わざわざプレゼントを」

「違う、その前」

「え、えっと、…俺の誕生日だったんですけど?」

「は?」

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