「やだ詩織ちゃん、名探偵だよねー。えっへへ、そう、明日ダーリンに食べて貰うの。あのね、ダーリンがこの前買ってきてくれたお土産で、調味料を貰ったんだけど、それを全部使ってみたの」
「ああ、それで。五種類の花火を一気に打ち上げたような味がしたんだね」
「みてみて、これこれ」
別に、頼まれてもいないのに、見せたくなって、キッチンに並べて置いてあったソレを手に取り兄の前に並べて見せた。
横並びになった調味料セットを見た兄が、それを端から端まで眺めた後、へぇ、と、軽く驚いて見せる。
「あの野暮ったい少年にしては、綺麗な土産を買ってきたね」
「野暮ったいだなんて、ストレートな事言わないでよ詩織ちゃん」
「ごめんごめん、ついね。けど、こんな物をわざわざお前に合わせて買ってくるなんて、愛されてるじゃないか、猫汰」
自慢するつもりが、「愛されてる」だなんて、舞い上がってしまう事を言われて、感情が一気に高ぶる。
ぽふん、と、のろしをあげた頭が、くらくらと、猫汰の幸福に痺れを巻き起こした。
「へ、へへ、おにぎりもね、ダーリンと、俺の誕生日にデートして、初めてほっぺにちゅーした時の、思い出なの」
「なんだと。猫汰、順風満帆なのは結構だが、結婚するまでは清いお付き合いでいなさい。せめてキスまでだ」
「はぁい」
まぁ、破る気満々だけど。大丈夫だいじょうぶ、どうせ許してくれるし。
「そうだ、この前新しいケーキの型を買ったから、ダーリンの誕生日にケーキ焼いてあげようかな」
「良い提案だね、猫汰、きっと喜んでくれるよ」
「うん!」
でも、ダーリンの誕生日って何時だろう?
付き合いたての半年が楽しすぎて、結構重要な項目なのに失念していた。早速、明日聞いてみよう。
えへへ、楽しみだなぁ。しあわせだなぁ。
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