「ふふ、けど、猫汰が楽しそうで何よりだったよ」
「それじゃあ、僕はこの後仕事があるから」そういって、詩織は握りつぶしたままの書類を持ってにこやかに去っていった。
その後ろ姿を眺めていた猫汰は、「しおりちゃんのバカー!」いなされた事に怒っていたが。豪星といえば。
「…つかれた」
彼の隣で、声が出なくなるほど脱力していた。
「龍児ー!どこだー!」
「龍ちゃーん!どこいったのー!
龍児が走り去っていった方に向かい、声を上げて姿を探す。暫くすると、「…あ、いた!」けんじが植え込みの傍で龍児を見つけた。
早速木々をかき分け近寄り、龍児の両脇へ座り込む。
「探したんだよ龍ちゃん」
反応が無い。しばらく、龍児の隣で黙っていると。
「………………………………………まげだぁ…っ!」
ようやく顔を上げた龍児が、死ぬほど悔しそうに泣き叫んだ。その肩を両脇からぽんと叩く。
「しょうがないよ龍ちゃん。あんな反則されるとは思わなかったじゃん」
「あんなの、試合に勝って勝負に負けてるだろ。フェアじゃねーって」
「うぅう…ぅぇえぇえ…」慰めるも龍児の嗚咽は止まらない。
「泣くなよ龍児ー」
「そうだよ。泣かないでよ龍ちゃん」
段々、龍児の泣きが込んでくると…自分の涙腺まで緩んできてしまう。
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