もういっそここで押し倒す。と言わんばかりの勢いでぐいぐい身体を押し付けられていたが。
「猫汰、豪星君。なにかなこれは?」絶妙なタイミングで帰ってきた詩織が二人の間を割り裂き、例の紙を取り上げた。
「あ!ちょ、返して詩織ちゃん!」慌てて取り返そうとしているが、意外と身のこなしの軽い詩織にいなされている。
「…ふうん?誰と誰が、いやらしい事の出来る権利なのかな?ん??豪星君??」優しく笑って、から、般若の相で睨まれる。
違うんですほんと違うんです。さっき説明した通りです俺に下心はありません。
おたくの大事な弟さんに手を出すというか出されるなんてほんと滅相もないというか勘弁してくれっていうか。
その意図を素早く伝えるべく全力で首を振った。
訴えが伝わったのか、「…猫汰。だめだよ」詩織は溜息ひとつ零すと、今度は弟の方に振り返り、無防備な額をびしっ!と打った。
「…うー!」詩織の下から悔しそうな声が上がる。
「詩織ちゃんが駄目っていっても、それは契約と関係ないもん!文句があるなら裁判だよ!」
「いいかい猫汰」効力を訴える猫汰の声を、詩織が冷静に遮る。
「風俗的な事は、君に被害があったとかそういう場合でない限り法的には戦えないよ。お前、そんなことは分かって言ってるだろう?」
「うっ」
「戦えたとしても、それは大きな誤解や語弊を産むだろう。それでも気軽に戦えると言うのかい?猫汰」
「う…っ」
「猫汰。今回はお前も楽しそうだったし、勝負も勝ったって事でいいじゃないか」
「…う、うー…」
「まあ、この書類が仮に使えたとしても握りつぶしていたけどね?」
わざわざこっちを見ながら、詩織がぐしゃあ!!と書類を握りつぶした。笑ってるけど顔が怖い!
「いいね豪星君?猫汰はちょっと羽目を外すところがまぁ可愛いのだけれど、それに乗じて、君も羽目を外さないようにね?しかるべき年齢や環境になるまで清い関係でいなさい。…分かっているね?」
「もちろんです滅相もないです」
「よろしい。君が猫汰の恋人でいる事を信頼しているよ?」
やめてその信頼いらない。
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