俺のこと?俺なんかしたかな?頑張ったねって言っただけなんだけど。

「てか、猫先輩。負けたあとに目の前で抱き着くとかえぐ過ぎっすよ」

「わざとじゃないもーん。偶然だもーん」

双子は顔を合わせると、「うわー…この人らえぐいわー」どちらともなく溜息を零した。

やがて双子はもう二歩先に足を進めると、「あいつ、暫くほっといてください。俺たちの方でなんとかしとくんで」龍児が去っていった方へ歩き出した。

「じゃ、あとはお二人で勝手にいちゃいちゃしててくださーい」

「うん。そーするー」へんじの言葉が終わらない内に、抱き着いていた猫汰がふっと、豪星の耳に息を吹きかけた。そして。

「だーりん」

「はい?…はぅっ!」

猫汰の口が豪星の耳をやわくかじる。産まれて初めての感触に全身がふるえた。

「忘れてないよねー?」口を離した猫汰が意味深につぶやく。何の事かと思ったが。

「体育祭が終わったら、俺のうちにきてね?」

「………」

あーー!そうだったーーーー!

ひとつ遅れて思い出し、汗をどっとにじませた。

「ちょ、ちょ、ま!」

「これで、ついに、俺とダーリンは心も身体も結ばれるんだね…!」

「ちょっとまってー!俺の心の準備がー!」

「待たない。ていうか、どれだけ待たされたと思ってんの…!」

「だって卒業まで待つって言ったじゃん!約束がちがうー!」

「うるさい!ダーリンの奥手野郎!もう逃げられないんだからね誓約書だってちゃんとここにあるんだからね!」

「なんで持ってんのー!うわわ!押さないでくださいー!」

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