騎馬戦が終わって間もなく。「ダーリン!勝ったよー!」猫汰が駆け寄ってきた。
「おめでとうございます」無難な祝辞をのべると、「わーい!」前面から抱き着かれた。彼のたくましい二の腕がぎゅうと絡みつく。その表面に傷口が開いているのを見て、「猫汰さん!」咄嗟に身体を離した。
「ケガしてるじゃないですか!血も出てるし!」
「え?ああ。そういえばそうかも」
「そうかもじゃないですよ!あんな落ち方したから…はやく手当してもらわないと」
「うーん。そうだね。でもその前に………詩織ちゃんは?」
「お兄さんですか?さっきお手洗いに行かれましたけど…」
「チャンス!…ふふふ、ねーダーリン」
猫汰がぎゅ、と豪星の服を掴む。その脇を、すっと人影が通り過ぎた。
「あ…龍児君!」呼び止めると、びくついた龍児が開眼して振り返る。負けた所為か、雰囲気が何時もより消沈していた。
「あの、残念だったけど、頑張ったことに勝ち負けはないもんね。お疲れさま!」
「………」慰めを受けた龍児が、みるみる眉を下げ始める。
「そうだねー!りゅーちゃんもがんばったよねー?ごくろーさまー?」
「………っ!」
猫汰が豪勢の腕に抱き着き、にやにや笑い始めた。ぴっと振えた龍児が俯き、次の瞬間、走り去ってしまう。
「りゅうじく…」様子のおかしい龍児を再び呼び止めようとしたが。
「いやー…先輩、えぐいっすわ」
「龍児も、これはちょっと煮え切らないだろうな」
背後から双子がやってきて、豪星と猫汰の両脇に並んだ。二人とも、顔が複雑に歪んでいた。
「…しょうがない人に惚れちゃったみたいだねーアイツ」
え?二人ともなんの話をしてるんだろう?
65>>
<<
top