「ええ…っ」言わんとする事は分かるが、だからと言っても…。でも、龍児が、こんなに引き下がらないのも珍しい。

…そんなに食べたいなら、ちょっとくらい「ダーリン。折れないでよ?」ですよねー。

「ていうか、それ言うなら俺も同じだろ」

「うっせぇ黙ってろ!」猫汰が言い切る前に龍児が叫ぶ。猫汰の米神がぴくりと動いた。

「あ?お前が黙れよ??なんなら物理でやってやろーか??」

立ち上がった猫汰が、両手をぼきぼき鳴らし始める。もう、何処からどう見ても、やる気満点である。

どうしよう、どうしよう。またこの展開になっちゃった。喧嘩よくない!でもどうやって止めよう!

はらはら汗を流す豪星の隣で、龍児もすっくと立ち上がる。

「…ごうせー。こいつ黙ったら連れてって良い?」よくないよくない!全然よくない!

うわー!龍児もやる気だー!こうなったら、こっちも物理で止めるしか…!

…あ!そうだった!足が動かないんだった!どうしよー!

見えない火花が散って、つぎの瞬間、拳が激突する―――「はいはいストップ」前に、それまで、隣で静観していた光貴が割り入った。

ぶつかる寸前だったというのに、絶妙な手さばきで二人の拳を受け止め「ガキは血の気が多くていかんねー」のんきに笑っている。

すごい!流石オトナだ!

「みつ!どけよ!」むなぐらをつかまれ、動きを封鎖された猫汰が、ぎゃあぎゃあわめく。

龍児は無言だ。しかし、目が「お前邪魔だ」と如実に語っていた。

「おいおいぼっちゃん。そんな目で睨むなよ」光貴はそれらも、へらへら受け流している。

「嫌な顔してると、友達に嫌われちゃうぞ?」

友達、嫌われ。の部分で、龍児がはっ!と豪星に振り返った。「嫌うのか!?」と、目で豪星に語りかけている。

いや、嫌わないよ。言葉のあやだよ。でも、喧嘩はお願いだからやめてね。

「ぐぅぅ…みつめ…」その内、わめき過ぎて疲れたらしく、猫汰が大人しくなった。声だけは悔し気だ。

龍児も、光貴の言葉が効いたのか、しゅんと肩を落としている。

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