「…だって…俺お前と一緒に食べたい!俺、体育祭で、お前とご飯が食べたいんだ!たまごやきも作ったんだぞ!」
「いや、そうは言っても…」
「お前の好きなエビフライあるぞ!」
「うっ。それは…」
龍児が珍しく駄々をこねている間に、隣でバキン!と、何かが割れる音が聞こえた。
首をかしげて振り返り、ひぃ!と叫ぶ。猫汰が、持っていたハシを片手で真っ二つに割り砕いていた。
それ割り箸じゃないよね!?握力すごいな!!
「はは、なんだ彼氏さん。モテるねー…いっでぇ!!なんだよ猫さん!」
「ふざけんなよハル!!ダーリンがモテていいのは俺だけだぞ!!軽率な口きくんじゃねえ!!」
ハシを折った剛力が、そのまま春弥のみぞおちに入る。
「ええ!理不尽!」春弥が雄たけびを上げて、そのうちぴくりとも動かなくなった。
光貴が隣で「こりないな」億劫そうに息を吐く。
三人が向かい合っている隙に、龍児が、今度は足を狙ってきた。
「いこう。俺、抱っこするから」恥ずかしげもなく告げて、再び横抱きになりかける。
「ちょ、ちょ…っ。龍児君…!」
「いこう」
「あ!?」こちらに気付いた猫汰が噛みつき始めたので「ダメだよ!先に猫汰さんと約束してたんだ。約束の順番は守らないと、ね?」さっと龍児の方をなだめた。押し黙った龍児が、いったん、豪星を下ろす。
「そうだよ順番だよ。彼氏が優先なんだからね?」横から、猫汰がべったりくっついて、龍児をあざ笑った。
みるみる、龍児の顔がゆがんでいく。あとちょっとで泣いてしまいそうだ。
「…やだ!」とうとう、龍児が叫び、猫汰と豪星を引き剥がした。豪星の方はやんわりと、猫汰はがつん!と。
豪星の腕に、今度は龍児がぎゅうとしがみつく。
「なにしやがる!!」猫汰が怒鳴るも、龍児は豪星から離れない。
「おれ、豪星と一緒に食べる!俺だって豪星とたべたい!だって、だって!体育祭で豪星と昼飯食えるの、今日だけだろ!だから一緒が良い!友達と食べたい!豪星と食べたい!」
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