「えー?そうかなー?」猫汰は最後まで同意しなかった。
他にも、紙のおかず容器が可愛いとか、卵焼きが比較的まとも…美味しい?とか。色々感想を零していると。「よー、お前等」横から声を掛けられる。
ハシを置いて振り返ると、いつの間にか傍に来ていた光貴と春弥が、豪星と猫汰の両端に座った。
「なになに?ご飯?」春弥が、楽しそうに弁当を覗き見る。
もぐもぐ、うずらを食べていた猫汰が、ピックを口から離して「みつ達も一緒に食べる?」同席を促した。
「そうだな。ご一緒しようかな」
「お!猫さんたちのお弁当にも卵焼き入ってるね。ね、俺たちのと食べ比べしない?」
「俺の料理と比べようだなんて、いい度胸じゃない?」
「お前、俺は本職だぞ。お前こそ良い度胸してんな」
二人が完全に隣を陣取り、自前の弁当(あちらも二重段のようだ。高校生の体育祭に、みんな、ちょっとはりきりすぎじゃない?)を広げ始めた。
例の卵焼きとやらを、早く出せ出せうるさい猫汰に、光貴が、分かったわかったと笑ってかわし、いざ、それをハシにつけようとしたところで。
「ごうせー!」弁当に集中していた全員の頭上から、別の声が響く。
一番初めに顔を上げた春弥が「お、だれだれ?」声の持ち主に反応した。
続いて豪星が顔を上げる。いつの間にか、むっつり顔を顰めた龍児が、豪星の目の前に立っていた。
「………あれ……」
「どうしたの光貴さん?」
「あ、いや。なんでもない。それより、この子誰だ?お前らの友達?」
「そうです」「ちがう」まったく同じ出始めで、まったく違う返答が揃った。
猫汰の拒否に「お前とはちげぇよ」龍児も目敏く同意した。…ほんと、仲がいいんだか悪いんだか。
二人の仲に乾いた笑いを零す豪星の腕を、龍児が突然、ぎゅ!とつかんできた。
驚く間もなく「俺と一緒に昼飯食おう!」荒い口調で強引に誘われる。「ええ!ちょっと待って!」慌てて叫んだ。
「龍児君!悪いんだけど、俺、さっき親父さんに断ってて…」
「知ってる!」
「ええ!知ってるの!じゃあなんで…」
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