よほど悔しかったのか「負けたー!くやしいい!!」昼食に差し掛かっても、猫汰はぎゃんぎゃん空に向かって吠えていた。
「まぁまぁ…お昼食べましょう」なだめるついでに話題を逸らすと、一瞬、不満そうに黙り込んだので「猫汰さんのお弁当、楽しみにしてたんですよー」棒読みで追い打ちをかける。とたん、「そうだね!勝負よりもごはんだよね!」ころっと、感情のさいころが変わった。
このひとの前向きな所って、ほんと長所だよな。
「ダーリン!今日は体育祭だから、はりきってお弁当つくってきたよー!」
はりきる猫汰が、どこにおいてあったのか、二段重の弁当箱を取り出した。
ひとつを猫汰の膝に、もうひとつを豪星の膝に乗せると、「みて!今日のお弁当すごくがんばったの!」自信たっぷりに蓋を開けた。
…おお。すごい…。弁当の中身が、何時もの3倍カラフルだ。
振り返ると、豪星の感想を、期待のまなざしで待機する猫汰が見えた。えーと。
全体像は、どうひねり出しても、すごい。としか言いようがないので、他に、感想になりそうな場所をこまごま探す。
「…あ。このねこのピック、可愛いですね」
自分の膝に乗せた弁当の、真ん中を陣取る、うずら?と、ミートボール?(なんで疑問符つくのっていうのはこの際おいておいて)を刺したピックをちょいとつまんで、目の前に掲げる。
「最近はね、ピックもキャラクタで可愛いの多いんだよ」と、猫汰が説明してくれる。そうなんだ。初めて知った。
つまようじとハシしか知らない自分は、携帯機と同じく時代遅れなんだろうな。
「この猫、あれですよね?木曜カントリーショーでよく再放送される」
「そうそう。ラブリーアニメーションの三匹の猫に出てくる猫だね。ピックのセットは、定番の、白猫ちゃんと、青猫ちゃんと、黒猫ちゃんの、三種類入ってるの」
豪星が持っているピックは、白猫ちゃんがにこにこ笑っているピックで、弁当の中では他に、おろおろしている青猫ちゃんと、むすっとした黒猫ちゃんが入っている。
「ていうか、何時も思うんだけど、三匹の猫って、黒猫ちゃんだけなんかムカつく顔してると思わない?」猫汰が、腕を伸ばして黒猫ちゃんをつまみ上げた。
むすっとした顔が、ちょうど、猫汰と睨み合う形になる。豪星も、猫汰をまねて黒猫ちゃんピックを指先でつまんだ。
「そんなことないですよ。黒猫ちゃんも可愛いです」この、愛想はないけど、なんとなく憎めない感じが可愛い。
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