「ふーん?そうなんだ」

「はい。…お!先輩!始まりますよ!」

三人で喋っている間に選手が準備を終えたらしく、位置について開始の合図を待機していた。龍児と猫汰は横に並んでいる。なんの因果か、同じコースを走るらしい。

二人が睨み合う中、ピストルがばん!と空砲を上げる。

一斉に走り出した選手が、まずは50メートルを走り切ってから、地面に置かれた紙を拾い上げていった。

「おー!早いな龍児!さすが!」一番初めに紙に辿り着いたのは龍児だった。紙を破りそうな勢いで開くと、一瞬だけ固まってから。

「…あれ。龍児なんか、こっちにきてねぇ?」

龍児がこちらに向かっているのに、一番初めに気付いたのはけんじだった。

続いて、「あ、まさか」へんじが声を上げる。

次に、「ごうせー!俺と一緒に来てくれ!」何メートルも向こうから、龍児が豪星に向かって叫んだ。え?なに?俺がなに?

「…あれ?なんか、向こうから猫先輩が…」再び、けんじが遠くを見ながらぼそっと呟く。

「…あ、まさか」へんじも続いて呟いた。

「ダーリーン!俺と一緒にきてー!」猫汰が、遅れて豪星に叫ぶ。え?また俺?なんなの?

とうとう横並びになった二人が、目的が同じと分かるや否や、豪星の眼前で思い切り激突した。

「邪魔だ豚ぁ!!俺が先に豪星に声かけたんだよ引っ込んでろ!!」

「あぁ!?先着じゃねえよ恋人優先だ!てめぇこそ引っ込んでろ!!」

競技中にも関わらず、殴り合いを始めそうだったので、「ふたりとも!」慌てて豪星が仲裁に入った。

「あ、あの!俺に何を借りに来たんですか?」

豪星の疑問に、すかさず「恋人!」「親友!」叫ぶ。

うわ…。無難なのに、俺に一番迷惑なのきた。

つい、へんじの方を怨みがましい顔で振り向くと、「そんな顔しないでくださいよー。俺の所為じゃないですよー」他人事のようにかわされた。

「ダーリン!いこう!」

「…うわ!」

先手を取ろうと思ったのか、猫汰に腕を強くひかれたが、勢いで足が痛み、転びそうになってしまう。

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