「すごいね!俺たちのチーム一番だ!」はしゃぐ猫汰が、次のバトンを受け取る。それに合わせて豪星も、足並みを揃えようとして。
「豪星くーん!がんばれー!」…え、あれ?今、父親の声がしたような?
「う、わ!」よそ見をしてしまったせいで、猫汰とのリズムが大幅に狂ってしまった。足をおかしな方向にゆがめ、そのまま地面に倒れこむ。
「ダーリン!大丈夫!」かろうじて巻き込まれなかった猫汰が、すぐにかがんで豪星を抱き起した。
頷こうとしたが、ずきっと痛んだ足に眉を顰める。どうしよう。捻ったみたいだ。
「ダーリン、立てる?大丈夫?」
「…す、すみません。足を挫いたみたいで」
「やだ!大丈夫!?」ひときわ大きな声で、猫汰が叫んだ。豪星の不調に感づき始めた周りが、ざわざわと揺れ始める。
うう、集中する視線が恥ずかしい。しかも、ほとんど抜かされちゃったみたいだし。自分の所為でとんだ迷惑になってしまった。
屈んだついでに、豪星の足を覗き込んだ猫汰が、紐をほどきながら「これじゃあもう、走れないね」残念そうにつぶやく。それが一層、豪星の心を貫いた。
「すみません…」と、言おうとして。
「よっし!じゃあ俺、ダーリンの分も頑張るから!」
突然、猫汰が謝罪を遮り立ち上がった。何を頑張るんだろう。そう思ったのもつかの間。
「よいせ!」
「…うわー!ちょ、え、なに!」
いきなり、自分の体がふわっと浮いた。浮いた視界の真上で、猫汰が爽やかに笑う。相変わらず、どこから見てもイケメンだ。
それはさておき。あれ、俺、今どうなってるの?なんか、猫汰に横抱きにされてるような気がするのは、気のせい?だよ、…ね?
「俺がダーリンを抱っこして走るから、落ちないようにしがみついててね!」
「ええ!やっぱりそうくる!…うわー!猫汰さーん!ちょっと待ってー!」
静止の言葉なぞもちろん聞かずに、猫汰はそのままの恰好で走りだした。
片付けに差し掛かりかけたコースを、男ひとり抱えて走る姿に、全員が呆然と見入っている。
恥ずかしくて、目をつむったまま開ける事が出来なくなってしまった。
「…どうしたごうせー!ケガしたのかー!」
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