時計を見ると、まだまだ、参加競技の時間とは離れた場所に針が頓挫していた。

今度こそ競技を見ようかなと、足を進めたところで「やあ、少年!」また誰かに背を叩かれ、びっくん!と跳ねた。

今度は誰だと振り返り、即座に戦慄く。

「詩織お兄さん…」

「久しぶりだね、元気そうでなりよりだ」

何時ものスーツとは違い、比較的軽めの私服を着た詩織が、にこやかに手を振っていた。

どうされたんですか?と聞く前に「今日はね、猫汰を応援に来たんだ!」聞いてもいないのに説明が始まる。

「弟が運動会…いや、高校生は体育祭だったね。とにかく、学生らしい行事に参加するなんて、小学校以来で、うれしくてね」

…あれ?中学校は?参加しなかったのかな?

猫汰の過去は、ちょくちょく謎めいていて、たまに首をかしげてしまう。

「しかも、騎馬戦では団長を務めるんだろう?それを見るのがとても楽しみでね…。ところで少年、猫汰が今どこにいるか知っているかな?」

そう言って、詩織がさっとカメラ付きの携帯機をとりだした。この流れ、大人の間で流行ってるの?

「えーと、さっき体育祭の運営委員会に騎馬戦の事で呼び出されてたので、そっちにいると思います」

「そうか。それじゃあ、運営委員会とやらに寄ってみるよ」豪星から時間を情報を聞き出すと、詩織はさっさと運営本部の方へ歩き去って行ってしまった。

今度こそひとりになった豪星は、また時計を見て、もう随分と時間が経っている事に気づく。

もうそろそろ二人三脚が始まるので、今の内にストレッチをしておいたほうがいいかなと、思った矢先、「次は1000メートルリレーです。参加選手は…」豪星の頭上から二人三脚手前の競技がアナウンスされる。

身体を動かすついでに競技を観覧にいくと。「…あ!龍児君!」友人の姿を見つけて声を上げた。

スタート地点ではなく最後の場所で待機しているので、彼はアンカーの役割なのだろう。腕を組んだり、足を動かしたりしながら身体の調整をしている。

手を振ろうと思っている最中に、スタートの合図が響いた。

一斉に選手が走り出して、コースの中心を争っていく。暫くすると、段々脚力に差がついて、順位が明確になっていった。

45>>
<<
top