「あ、あれ?おやじさん?どうしてここに?」

「どうしてって、今日は体育祭だろう?見に来たにきまってるじゃないか!」

ああ。そういえば、うちの学校父兄参加オッケイだったな。

といっても、高校生にもなればどこの家も参加の意欲を見せないのがふつうで、現に、須藤たち以外は、父兄らしい人の姿はほとんど見当たらなかった。

豪星の父親も、体育祭の話すら聞いてこなかったし、昨日、明日は体育祭だよと言っても「へぇ?そうなんだ、頑張ってね」という、あっさりとした反応だ。

「龍児には会ったか?」

「いえ。今日はまだ」

「そうか、俺もなんだよ。今探してるんだけど、見つからなくてよ。なあ?沙世」

「ええ、そうなの。龍児君の参加競技、見逃さないと良いんですけど」

「そうそう。あいつさ、恥ずかしいのか参加競技を当日になっても教えてくれなくてよー。今必死で探してるんだよ」

「俺が知ってる限りだと、龍児君、騎馬戦に出ますよ」

「お!そうなのか?ありがとよ!」

「せっかくビデオ買ったし、とらねーとな!」そう言って、須藤が小型の機械をさっと取り出した。

体育祭っていうより、小学生の運動会を見に来た親みたいだな。

「そういえば豪星、今日の昼飯はどうするんだ?なんだったら、たくさん弁当作ってきたから俺たちと食べないか?」

「あ、すみません。友達と一緒に食べる事になってて…」

「あ?なんだ。じゃあ友達も連れて来いよ。一緒に食おうぜ」

「…い、いえ。その、あっちがもう、お弁当も用意してくれたみたいで。知らない人の中にさっと入るのも、気まずいでしょうし、今日はやめておきますね」

その友達と龍児の仲が悪いんだ。とは言わず、無難に断ると、「そっかー」須藤が残念そうに諦めてくれた。

「せっかく、豪星君の好きなエビフライ作ってきたんですけどね、ざんねん」

え。ほんと?うわ、食べたかったな…。俺も残念。

龍児はあっちにいるんじゃないか、そっちにいるんじゃないかと、学生目線でアドバイスした後、「ありがとな!」と言って、二人はさっさと競技を見に言ってしまった。

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