「はぁあもう、ありえない!ありえないくらいムカつく!なにあいつ!ダーリンに癒されないとやってらんなーい!」

「ははは…そうですか」

男の腕にひっついて、何がどう癒されるんだろう。というのは、猫汰にしか分からない何かなんだろうな。

とりあえず、公衆の面前で抱き着くのはよして貰いたいのだが、機嫌が悪いままだと後々怖いので、剥がさずそっとしておいた。

「あー。落ち着くー」

「そうですか…」

「うん!やっぱダーリンは最高だよね!…あ、そうだ」

「言い忘れてた」自分の喉をこすりつけるようにして豪星に甘えていた猫汰が、ひょいと上目使いに豪星を見上げた。

「俺、合コン行かない事にしたから」

「え?そうなんですか?」

「うん。だってよくよく考えたら、俺、ダーリンいるのに合コン行くなんておかしいもんね。ごめんね?心配させちゃって」

「いや、まぁ、それは構わないんですけど…猫汰さんが行かなくても、大丈夫なんですか?」

その「合コン」とやらのために、今回、色んな人が猫汰に協力をしてくれたみたいなのだが。主賓が抜けては元も子もないような?

豪星の疑問を受け止めた猫汰が「だいじょーぶだいじょーぶ」軽い声で笑った。

「実はね、原野君に相談したら、なんとかしてくれるって言ってくれたから、大丈夫だよー?」

「あ、そうなんですか?凄いですね、原野」

「うん、頼りになるよねー?」

そのとき、教室の向こうから、がたん!!と椅子を蹴る音が響いた。

何事だと、豪星が振り向くよりも先に、何かが高速で豪星達の傍を駆け寄り、そして離れていった。

視界に捉えられない早さで消えたソレの姿を目視出来ないまま呆然としていると…不意に、猫汰の姿が、忽然と消えている事に気が付いた。

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