「おおお…!」

短冊に切られた、自分の「中間テスト」の結果を宙に掲げながら、豪星は喜びの声を上げた。

順位が、上がってる…!それも、一番とか二番とかじゃなくて、十番とか二十番とか、どーんと上がっている!

「どーだった?」隣で、自分の結果を興味なさげに破り捨てていた猫汰が、にこにこ笑って豪星に尋ねた。

喜びから、つい、思い切り振り返ってしまう。

「上がってます!凄い上がりました!こんなに良い順位が取れたのは初めてです!」

これも一重に、猫汰が今回大分豪星の面倒を見てくれたお陰だろう。

その感謝を余すことなく「猫汰さんのお陰です!有り難う御座います!」と口にして叫べば、まるで自分のことのように、猫汰が頬を染めて笑った。

「そんなことないよー!ダーリンの飲み込みが早いんだよー!俺も教えてて楽しかった!」

実を言うと、豪星も猫汰に勉強を教えて貰っている間とても楽しかった。

彼の説明はわかりやすすぎて、勉強がその内遊びの感覚に入るのだ。

きっと、教え方が教師に向いているのだろうなと思ったが、人格の事を考えると、やっぱり向いてないなと、つい先日も口を閉じたばかりだ。

そんな事よりも、自分の幸先に綺麗な光が見えてきた事に大層興奮を覚えた。

「これで就職の希望が見えてきました!」思ったままの事を口にすると、猫汰がきょとんとした声で「しゅうしょくのきぼう?」豪星の言葉を反復させる。

そういえば、彼には「就職するつもりなんだ」という事以外は、何も告げていなかった事を思い出す。

「ダーリン、もう就活してるの?」

「はい!9月に企業試験と面接を受けさせて貰う予定なんですけど、その時、一学期の成績でまずそれが受けられるかどうか判断されるらしいので」

「ふーん?そうなんだ?」ぱっとしない声で豪星の説明を聞いていた猫汰が、その内「あ!」と何かを思い出した。

「就職といえば!ねぇダーリン、良かったら詩織ちゃんの」

「ごうせー!!」猫汰の声を遮って、張りの良い声が教室中に響き渡った。

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