未だに、ぶるぶる震えている龍児の肩に、そっと、しかし強く手を置いた。
びくり!と痙攣する龍児の目を、じっと見つめてから、破顔する。
「気にするな!」と、大きな声で言ってやると、一瞬だけ、龍児の震えが止まった。
「そんな事はな、したい時にすれば良いんだよ。まだ子供なんだから、そんなマセた事で悩まなくて良いんだ、龍児」」
「………」
「それにお前、まだ付き合ってないんだろ?だったら、付き合えるようにがんばれよ。それからの事は、それからだろ?」
まだ過程途中で、気がはやいと言えば、龍児が割とすんなり「…それもそうか」震えを昇華させた。
雰囲気を何時も通りに戻した龍児が、真っ直ぐな瞳で須藤を見上げる。その頭を、がしがし撫でた。
「そうそう。付き合えるようになったら、向こうからしたいかどうか、話してくれるだろうから」
「…向こうから」
龍児が、ほんのり頬を染める。よほど、相手の事を大事に思っているのかがよく解る風貌だった。
「あっちが言ってくれれば、出来るかな」言いながら、龍児が照れ笑いを浮かべる。
「お?そうだな、そうかもな。それに、向こうから恥ずかしそうに言ってくれると、案外気乗りするもんだぞー?」
「…そうなんだ」
「ま、とりあえず、付き合えるようにがんばれよ?」
「…おう!」
「ご飯どうしますー?」話が丁度終わりそうな処で、沙世が階段下から夕飯の是非を尋ねてきた。
その声に「今下りる」と答えてから、龍児に振り返った。
「夕飯出来たみたいだぞ、食うか?」
「たべる!」
様子が戻れば、早速腹が減るらしい。龍児がらしさを取り戻した事に、そっと胸をなでおろした。
しかし、この数十分で、彼の雰囲気が少しだけ変わったような気がした。
―――子供の成長って、早いんもんだなぁ。
そんな事を、しみじみ思える今が、とても幸せだと思った。
とりあえず、赤飯は明日炊こう。それで、三人で一緒に、笑って食べよう。
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