もん。じゃないから。言い方可愛くしても事実が最低な事に変わりないから。

「ま、そんな入れ食いの猫汰さんだったので、他校に画像と連絡まわせば、何人か確実に女つれるんじゃね?ついでに、俺彼氏が本命だから、合コンの時はパンダで良いよって言って、掛け合ったら、すげー勢いでオッケー貰ったんだよね。お互い了承済みってことで、なにも問題ないよね?」

「あー、あー…あ」

あ、けんじがこっちを向いた。こっちに気づいた。なにか「あ、やべ」みたいな顔してる。

うん。…うん。言いたい事は分かるよ。俺、此処から立ち去った方が良いってことだよね。

出来れば、何も聞いていなかった振りをして、少し時間をおいてから、ひょっこり戻ってきた方が、絶対良いってことだよね。

でも、もう遅いかな。何故かと言えば、猫汰が、けんじにつられてこっちを見てしまったからだ。

豪星を見つけた猫汰の顔面が、瞬時に真っ青になる。

…うわー。くるぞー。

「――――だぁぁありぃいぃぃいいいいいん!!違う!!違うのぉぉおおおぉおお!!」

うんうん。何が違うんだろう。

「俺確かに彼女二十人居たけど!全部遊びで過去なんかどうでも良いっていうかもう全部切ったから!!捨てたから!!まだ残ってるとかそんなんじゃないから!!」

うんうん。弁解がねじ曲がっている上に、最低だ。

「俺ダーリンが本命だから初恋だから初婚予定だから!!合コンだって俺しかたなく組んだっていうかダーリンの貞操の為なら俺が運動部の野郎共にパンダにされるとかほんと仕方なくで!!違うの!!俺合コンして浮気したいとかそうじゃなくて!!ダーリンの貞操の為なら手段を選ばなかったっていうか!!ダーリンの貞操が!!」

うんうん。有り難う。うれしくない。

豪星の胸にしがみついた猫汰の、悲鳴のような弁解を白目で聞きながら、…お腹すいたなぁ、と、ひとりぽつねんと考えた。





「…ねぇ、武雄さん、ちょっと」

読み切れなかった新聞を夕飯前に眺めていると、夕食を作っていた嫁が、すらりと戸を開け居間に入ってきた。

自分の傍に膝を折って座ると「ねぇ、武雄さん」もう一度こちらの名前を呼ぶ。

「どうした」神妙なその声に応えるため、新聞を畳んで机に置いた。

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