二人と別れる間際、へんじが「そういえば、騎馬戦の選手名簿が出来たんですよ。けんじが猫先輩に持って行ってくれてるんで、そのへんで会うかもしれません。もし会ったら、豪星先輩の事は俺が伝えたって、言っといて下さい」そう説明して、直ぐに龍児を連れて去っていった。

教室に向かうと、辿り付く前に廊下でけんじがうろうろしているのを見つけた。

「――あ、いたいた、イケメンせんぱーい。へんじから騎馬戦選手名簿預かってるんすよ。どうぞー」

「ありがとー。ちょっと待ってて、すぐそっち行くから」

けんじが教室扉の横窓に立ち、猫汰と話始める。なんとなく教室に入るタイミングを失い、その場で話が終わるのを待機する形になった。

「…そういえば先輩。白組騎馬戦選手、すげーっすね。ほとんど運動部の選手やってる奴じゃないですか。偶然にしちゃ集まり過ぎのような…」

「うん、実はね、運動部の奴らに協力して貰えるよう、色々連絡まわしておいたの」

「え?イケメン先輩帰宅部ですよね?連絡はさておき…どうやって協力して貰ったんすか?」

「うん。サッカー部の部長通して、運動部の奴らに、俺の顔つかって合コンやってやるから良い奴よこせって言ったの」

「え」

え。

びっくりしすぎて声が出なかった。

どういうことなの。

「俺、過去に付き合った女が二十人ぐらい居るんだけどさぁ」

「え」

え。

彼の過去に、彼女がそれなりに居た事は知っていたけれど。二十人?

向こうの教室で、ざわり…!と、空気の揺れる気配がした。主に男子の。

「ちょ、ちょっと待って。二十人て…イケメン先輩、それ、女とひとり、大体一ヶ月付き合ったとしても、二年弱くらい、常に彼女が入れ替わってたって事っすよね…?」

「うん、それがどうかしたの?」

「…うわっ…俺、女に生まれ変わったら、絶対顔で男を選ばないようにするわ」

俺もそうしよう。絶対にそうしよう。

「失礼な言い方だなー。別にこっちが無理強いした訳じゃないし。ただ、全員、あっちから、どうしても、俺と付き合いたいって、告白してきたんだもん」

34>>
<<
top