来月に体育祭が行われるので、校内の半分はめっきりその雰囲気に包まれていたが、もう半分は、体育祭が行われるよりも前に来たる中間テストの、追い込み寸前の空気に満たされていた。

例に漏れず、豪星も単語帳を持って、廊下なり、教室なり、地道に勉強をしていた。

豪星の勉強は、今回が特に重要な役割を担っていた。なにせ、今回と次のテストで、豪星の就職が左右されるかもしれないからだ。

豪星はもう今年が始まる頃から、就職することに色々と手を回していた。

職員室に趣き、就職について強い教師を捕まえ、この学校を卒業してから直ぐに就職した生徒の例を聞き込み、相談し、「なんなら、OBのいる企業に連絡を取ってみるよ」と橋渡しまでこじつけ、更には、連絡の取れた企業の方から、「じゃあ時期になったら面接をしてみよう」という話にまで発展した。

但し、その面接まで行けるかどうかは、豪星の一学期の成績次第で検討との条件つきだった。

教師は、「中島の今までの成績なら何も問題ないよ」と言ってくれたが、なにせ人生の分岐点である。緊張感を忘れずに望みたいところだ。

昼休みに入ると、突然、猫汰が「あ!」と声を荒げた。

何事だと、単語帳から目を離して彼を見ると、先にこちらに振り向いていた猫汰が、潤んだ目で豪星をじっと見つめた。余計に、何事だろうと訳を尋ねると。

「ごめん…お弁当忘れてきちゃった」

珍しい返答が返ってきたので驚いた。

「今日は起きるのが遅くなっちゃって。お弁当は作ったんだけど、慌てて出たから持ってくるの忘れてきちゃった…」風邪を引いた時以外は、かかさず手作り弁当を持参してきた彼に、そんなうっかりが現れるとは。

てっきり、テスト勉強に励んで寝過ごしたのかと思いきや「夜中まで詩織ちゃんと喋り過ぎた」との答えが返ってきたので、頭の良い人はやっぱり違うなと、遠い目になりながら思った。

ちなみに、テスト勉強は普段の授業を聞いていれば大概、ほぼ満点近くを叩き出せるらしい。

凄すぎて、羨ましいが裸足で逃げ出すレベルだ。

自分の過失を嘆いていた猫汰に「たまには購買も良いじゃないですか、俺買ってきますよ」と言って立ち上がる。

猫汰といえば、忘れ物がよほどショックだったのか、「俺も行く!」とは言い出さず、「ごめんねー…」と、弱々しく手を振っていた。

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