「騎馬戦はチーム戦だよ龍ちゃん。下手してこっちが負けたらどうするの?豪星先輩とイケメン先輩、別れて欲しいんでしょ?」
にべもなく返そうとする龍児に必殺の裏技を繰り出すと、途端龍児の息が詰まった。
「ねえ龍ちゃん、個人戦じゃないんだから、今回の事は龍ちゃんだけ頑張ってもしょうがないよ。だったらさ、このさい考え方を変えようよ。それにさ、もし龍ちゃんがみんなと頑張って格好良く勝てれば、豪星先輩褒めてくれるかもよ?」
「………豪星が?」
「うんそう。すごーい!龍児君!リーダーが出来るなんてかっこいー!って、喜んでくれるかもよ?ねぇ、今の言い方先輩に似てた?」
「似てたにてた!」
もう一度、ぐっと、龍児が息を詰める。
暫く、目線を落として考え込んだ後、龍児は眉を落として「…俺、何すればいいんだ?」素直に双子を頼った。
ああ、すがすがしい程単純だ。こいつのこういう所、ほんとバカワイイ。
「よしきた。えーとまずはね…」
早速、体育委員会で配られた騎馬戦規定の書類を取り出す。それを、龍児が上からまじまじと眺めた。
ああでこうでそうでと、真剣に聞き入る龍児に内容を説明していく最中。
「おやつが出来ましたよー」
戸がスラリと開いて、向こうから小柄で綺麗な女性が盆を持って入り込んできた。
盆の上には、カップが三つと、できたてのおやつが三つ。年上の美人ににこりと会釈をされ、一瞬の内に緊張が走った。
「あ、ど、どうも。お邪魔してますお母さん」
「いえいえ」
「すみません」
お互い同じ事を思って(二卵性でも、やっぱり思うところは似通っている)いたのか、同じ様な返答をしてお茶とおやつを受け取った。
おやつは出来たてのプリンで、表面がいかにも手作り感にあふれていてとても美味しそうだった。
ぺろりとそれを平らげた後、直ぐ、同じくプリンを食べ終えていた龍児にひそひそと耳打ちした。
「おい、龍児!お前の母さんすっげぇ美人だな!」
「…そうか?」
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