編み目のような畦道を車輪で進むと、思っていたよりも早く目的の場所へ辿り着いた。
敷地の中に停めていいのか、外に停めていいのか迷った末に、畦道の、邪魔にならない場所に自転車を置いて、へんじとけんじは広大な庭を持つ屋敷の中へと入り込んだ。
直ぐ、飼っている犬にぎゃんぎゃんと吠えられた。丁度犬の近くに立っていたけんじが、不意打ちにびくりと戦慄く。こういう乱暴な犬、久しぶりに見たなぁ。
犬に吠えられたまま、二人で玄関の前まで進むと、立派な扉の前で小さなインターホンを鳴らした。カメラなどはついていない、声と音だけを知らせる年代物だ。
「こんばんわー、誰かいますかー?」と、何度もボタンと声をかけ続けていると、暫くして。
「…どちらさまですか?」
目的の人が、早速扉を開けてお出ましになった。
三人で顔を見合わせた後、固まる龍児の目の前で、二人揃って「ぶっは!」と吹き出した。
「おいおい!龍ちゃんにしては気の利いた台詞返してきたね!」
「おいおい!お前どちら様なんて言葉知ってたのかよ!ガッコと違ってアタマ良いじゃねえか!」
ゲラゲラ笑う自分達に、漸く動き出した龍児が、顔を真っ赤にして「帰れ!!帰れ!!」と、声を荒げて押し返そうとした。
そうは問屋が卸さないぜ!
「そう当たらないでよ、色々話があってわざわざ来たんだからさ」
「帰れ!!」
「お前にとって大事な話なんだよ、良いからちょっとウチにあげろって」
「うるさい帰れ!!」
「おい龍児、誰か来てんのか?」
龍児の背後から、ひょっこり、背とガタイの良い男が顔を覗かせた。龍児の父親が、ぎゃあぎゃあ煩い喧噪を聞きつけたのだろう。
直ぐに、龍児をからかう為の手を止めて、二人でぺこりと頭を下げる。
「お父さん。遅くにすみません、こんばんわ」
「…どちら様だ」
「龍児のお友達様ですお父さん、こんばんわ」
けんじが自分達の身分を明かすと、龍児の父親が手に持っていた物を、突然ごとんがしゃん!と落とした。それを拾わず、じっと、自分達を凝視してくる。
え?なに?親子そろって歓迎されてない雰囲気?
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