件の流れは、途中で介入してきた双子のとんでも企画で収まった、かと思いきや、その余波が下校時刻後に流れ込んできた。

今日の疲労にげっそりしつつ、靴を履き、帰ろうとしていた豪星の制服の襟を、誰かが後ろから鷲掴んできた。かと思えば、背後から「ダーリン!」と、怒気を呼び戻した猫汰の声を浴びせられた。

びく!と、本日何度目か分からない震えに襲われる。

振り返ると、恨めし気にこちらを睨む猫汰が「やり直し!」と言って、豪星の制服を掴んだまま引きずり始めた。

変な格好のまま、「何がですか!?」と叫べば、チッ、とあからさまに舌打ちを打たれる。今日の猫汰さん、なんか怖い!

「誕生日に決まってるでしょ!?もうこの際終わってるとかは良いから、お祝いしに行くよ!」

「えええ!?そんな喧嘩腰で祝われても…すみません!もうちょっと優しく引っ張って下さい!」

「よりにもよって…アイツにさき越されるとか、まじふっざけんなよ…っ」

怒りを反復させている猫汰になんとか体勢を戻して貰い、ぶつぶつ文句を言われながら、それでも、猫汰の奢りで、行きたい場所が思いつかない豪星の代わりに、猫汰の行きたい場所を付いて回った。

何時もは見えないお花を飛ばしている彼が、豪星といても、ずっと機嫌が悪いのを見るのは初めてだった。

それでも、食べていたアイスを「あーんしろ」とか、服屋で「ダーリンが一番好きな色を選べ」とか、綺麗なカフェで「好きな物頼んで」とか、命令口調ながらも、豪星を贔屓にする所は通常運転だ。

何故か疲れる奢られ攻撃を連続され、帰る頃には時刻が9時より右側に過ぎていた。

げっそりしながら玄関の扉を開くと、豪星の帰宅に気付いた父親が、ひょっこり顔を覗かせてきた。

疲れた息子の顔を見て、「どうしたの?」と、疲労の訳を催促してきた。

「…実は」

その時はほとんど判断力がなく、つい、ぺろっと喋り始めてしまったのだが。

げらげらげら!!と、父親の笑いが止まらなくなった所で我に返った。

なにを正直者になってるんだ俺は。父親にこんな話をしたら、笑われるに決まってるだろ。

「うける!流石僕の息子!十八で修羅場経験するとかほんと受ける!童貞で彼氏がいて男と修羅場になるとかどういう才能なの!?息子が面白すぎて腹筋が割れる!卵パックみたいになる!あっははははははは!!ひー!はらいってぇ!!」

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