「ごめん手伝って!お願い!」

主語は無かったが、内容を察したらしい双子が、揃って「了解っす!」と同意し、急いで、猫汰と龍児と、その間に割って入っていた豪星に駆け寄った。

猫汰は豪星が抑え込み、龍児は双子が二人がかりで机に押さえつける。抑え込んだ猫汰は、全身の力を入れているにも関わらず凄まじい抵抗を豪星に加えてきた。

抑えきれなかった片手が、宙にぶんぶんと振り回される。その視線は、真っ直ぐ、龍児の方を射殺していた。恐らく、龍児も同じ状態なのだろう。

「はなせぇええぇええ!!こいつぶっ殺してやる!!」

「やれるもんならやってみろや!!お前こそ全身の骨隅から隅までぶっ潰してやるからな!!」

「二人とも落ち着いて!」

「龍児どうどう!落ち着け!ひっひっふー!」

「けんじ!それ生まれる方!…あーもうっ、ねえ先輩!何があったの!?」

龍児の半分を押さえていた双子が、手近な場所で成り行きを茫然と見ていたクラスメイトに話かけて、片耳で器用に事情を聞きだした。

それを片割れにも伝えると、お互い顔を見合わせ、ふむ、と頷き合う。

ぎゃあぎゃあ罵声を浴びせ合う轟音の中、双子は唐突に、龍児を押さえたまま、猫汰に「おーい、イケメンの先輩」と、大きめの声で喋りかけた。

その瞬間、猫汰の火の粉が双子にも飛びかかりそうになったが。

「後ろ後ろ」

「あぁ!!?」

「アンタの彼氏、引いてるよ」

「龍児、前まえ」

「あぁ!?」

「豪星先輩、めっちゃくちゃ引いてるけど?」

―――ぴたりと、二人が、スイッチを切ったかのように動きを止めた。

急に鎮火したかと思えば、何か、怖い物でも見るようなゆっくりさで、恐る恐る豪星の方に振り返る。

「あ、あの」

状況に蒼褪めていた豪星の、怯えた顔に気付くと、二人同時に目を見開き、それから、相当忌々しそうに、「チッ!」と、盛大な舌打ちを、同じタイミングで打った。

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