そういえば、最近何処かで落として無くしてしまったなと思っていたが、どうやら龍児が拾ってくれていたらしい。

ありがとう、と言いかけて。

「お前この前遊園地行った時、これ落としただろ?拾っといたから」

「…は?」

龍児がさらりと言った言葉に、あ、と豪星は動きを止め、同時に、猫汰が地を這うような声をひねり出した。

途端、ぎりぎりと、音がしそうな程強い力で猫汰が豪星の腕を掴んでくる。痛い、と、叫べない程の圧力が、豪星をびしびしとつつき、刺してきた。

「どういう事?遊園地?遊園地ってお父様と行くって言ってたよね?ねぇ?ねぇそうだったよね?ダーリン、まさか俺に嘘ついてたの?俺に嘘付いてりゅーちゃんと遊園地に行ったの?ねぇそうなの?ねぇ?」

目をいっぱいに見開きながら矢次に尋問する猫汰の視線に絶えきれず、首だけ回避させると、いつの間にか豪星達の机に、誰かの机を勝手に借りてくっつけた龍児が、座ってこちらをじっと伺っていた。

その顔に、ひそひそと呟く。

「りゅ、龍児君。ゴールデンウィークのこと、学校ではナイショにしておいてねって言ったじゃないか…」

「そうだったっけ?わりーわりー」

悪い、と言っているのに、何が悪いのかよく分かっていなさそうだ。

そりゃそうか、内緒にしないと困るのは豪星だけなのだから。

豪星が何も答えない内は、少しも話題を逸らす気がないらしい猫汰が、無言で豪星をにらみつけてくる。

居たたまれないし活路も見えない、どうしよう、と、思っている処に。

「あ!むしぱん!持ってきたのか!」

多分、一番話題を変えない方が良い人物が急に話題を変えてきた。しかも、さっき別の事で詰め寄られたばかりの事に、だ。

案の定、琴線が三倍触れたらしい猫汰が、目つきをもう3ミリほどつり上げてから龍児の方を見た。

ぎろり、という擬音が、これほど似合う動作もない。

「…お前、昨日、ダーリンに誕生日のプレゼントあげたんだってね?俺、恋人なのに。教えても、知りもしなかったのに、お前が」

それ以上でもそれ以下でもない事実を、猫汰が淡々と龍児に向かって呟いた。静かすぎて、逆に恐怖を感じる口調だった。

何の意図で話しかけられたのか分からない、という顔を暫く浮かべていた龍児だったが、その内、内容を自分なりに解釈したらしく。

「なんだお前、豪星のカレシの癖に誕生日もしらねぇの?ははは、ダッセ」

なんだか凄い事を言ってのけた後、笑って、笑って、笑って。

「―――――っざけんじゃねぇぞお前ぇ!!」

最終的に猫汰が切れて、笑っていた龍児を思い切り掴んで締め上げた。

「……いっ…で…!」と、猫汰に締め上げられた龍児が、唸りながら、じろりと猫汰を鋭い眼光で見下ろした。

それに臆した様子もなく、涙さえ浮かべそうな形相で、猫汰が荒い息を繰り返す。

「お、おま、お前、ふ、ふざけんな、ふざけんなよ!!なにしれっと、人の恋人と浮気しまくってんだ、煽りかますとか上等じゃねぇかよ!!」

「猫汰さん!なにやって…!」

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