大げさな冗談に、はははと笑ってみせたが、ふと、彼が大企業の次男坊である事を思い出して、一瞬笑いが引っ込んだ。

…冗談だよ、ね?

「詩織ちゃんに頼んでみようかなー」

冗談だよね!?

「ええと!あ!猫汰さん!あそこ!!なんか神社っぽいところありますよ!?いってみましょう!ね!?」

「え?あ、ほんとだー!いってみようかー!」

「はい!行きましょう!」

結局買わなかった帽子を店に戻し、此処から更に、数段人が溢れる大きな鳥居の下に向かう。

道路に直面した入口は、遠目で見た時よりも大きかった。

広い境内を見渡して「広いですね」と呟いた豪星に、猫汰がぱしぱしと腕を叩いてくる。

「だ…豪星君!そこ立って!記念の写真取るから!」

「あ、はい」

鳥居の柱の傍に豪星を立たせて、猫汰はすかさずスマホを取り出し、柱に寄り添う豪星を、縦に、横に、果ては斜めに、大量のシャッター音と共にとりまくった。

あらかた終えると、満足気に歩み寄ってきた。その隣を、すっと横切ろうとした40代くらいの男性を、ぎゅ、と捕まえる。

「すみませーん、写真撮って貰ってもいいですかー?」

服を急に掴まれた男は、一瞬目を見開いたが、直ぐ、人の良さそうな笑みを浮かべて頷いた。

猫汰からスマホを受け取り、3メートル程離れて、写真を何枚か取り始める。

猫汰が「ありがとうございまーす!」と明るく切り上げると、男は笑みを浮かべたまま、猫汰にスマホを返し、人込みの中へと去って行った。

戻ってきたスマホを手に、撮り終った写真を確認しながら、猫汰がにやにやと笑う。

「いえーい!俺の幸せアルバムが増える!」

「え?アルバムを作ってるんですか?」

「うん!豪星君のちっちゃい時の写真を貰い始めてから、汚さないようにって思って作ってたんだけど、今は大きい豪星君の写真も印刷してるの!俺の今一番楽しい趣味!」

言われてみれば、今日に限らず、偶に写真を強請られていたような気もする。

その場の乗りかと思いきや、そんな理由があったとは。

意気揚々と、事の発端から、何処にこだわっているかまで説明を受けたが、被写体本人なのでコメントがしづらい所だ。

猫汰の高説が大体終わると、境内の中へと進んでいった。もっと向こうの、豪奢な赤い建物が本殿らしい。

「あ、社務所がある、豪星君、おみくじ引こうよ」

「良いですね」

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