オモチャが欲しい!と強請った頃もあったが、今はご無沙汰している。普通に暮らせていれば充分だし、一度お金について無理をした所為もあってか、誕生日だからといって、余分な物を必要だとは思わない。

そう言うと、父親が「枯れてるなぁ」と呟いた。余計なお世話だ。

「もっとさー、ないの?ギター買って欲しいとか、バイク買って欲しいとか」

「なにそれ、どっちも別に必要ないじゃないか」

「いやいや、君の年齢は特に必要の無いものを欲しがるのが普通だよ、思春期っていうだろ?無駄な物にばかり思いを馳せる、人生の春なのに」

「無いならないでいいんじゃない?だって、無駄な物なんでしょ?」

「うわぁ、そういう捉え方するか、いや、僕が言いたいのはそういう事じゃなくてね…」

コンビニに着いても、人生の春について延々と二人で論議していたが、酒を買い、ケーキを買い、煙草を買い、お菓子を買っても結局決着がつかなかった。

最後には、レジに品物を置いた父親が「まあいいや」と、適当な口調で折れる。

「君の春は今じゃないってことだね、分かった分かった、何時か来る季節だって、そういう事にしておこう」

「投槍な言い方だな」

「それこっちのせりふー、それより、豪星君が中々折れないからお酒いっぱいになっちゃったよ」

店員さんが、何本もごろごろとカゴに放り込まれた酒類の値段を、ひとつひとつレジに読み取っていく。

それを、右から左へ眺めながら「別に俺の所為じゃないでしょそれ」と、小さく抗議しておいた。

家に戻ると、早速ビールの缶を開け始めた父親だったが、ふと、何か思いついたように顔を上げて。

「そういえば豪星君、今更だけど誕生日僕と一緒で良かったの?別にもう高校生だし、母さんの命日はともかく、誕生日くらい自分の好きにしていいんだよ?」

「あ」

何も言わなかったから何時も通りにしたけど、と言う父親に、そういえば、なんの疑問も抱かず、自分も何時も通りにしていた事に今更気づく。

「…まぁいいんじゃない?」

「いや、良いの?猫ちゃん、この前来たとき君の誕生日が近いのに何も言ってなかったけど、もしかして誕生日が何時かって教えてない?」

「うん」

「うわぁ、それ多分、今度猫ちゃんの誕生日が来たときにでも聞かれて、どうして言ってくれなかったのー!って怒られるパターンだね」

「怒られるようなことかなぁ…」

「怒られると思うよー、豪星君、世の中には他人の誕生日を祝いたい人種も居るんだから、多少はつきあってあげなさい、…ま、それはさておき、豪星くーん、18歳のお誕生日おめでとー!」

「あー、ありがと」

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