隣では龍児が、豪星と同じような格好で寝入っていた。深く眠り込んでいるのか、一向に目覚める気配がしない。助手席の気配も消えているので、沙世も途中で眠ってしまったようだ。
なんとなく、無言のまま暫く窓の外を眺めていたが、その内前を向いて、次に隣を見た。
相変わらず、過去の豪星と同じく、首が痛くなるであろう格好で龍児がすうすう眠っている。その肩に、とんとんと、人差し指を数回押し当てた。
「龍児君……龍児君」
何度叩いても起きない事を確認すると、そっと指を離した。
豪星の行動を不思議そうにバックミラーで覗いていた須藤に、小さな声で「親父さん」と呼びかけた。また不思議そうに、須藤が「なんだ?」と答える。
「………聞きたい事があるんですけど」
「どうした、改まって」
前を向いたまま目を丸くしているであろう須藤に、一度、息を深く吸って、吐いてから、再び向き直る。
…少しだけ躊躇ったが、瞬きしている内に腹を据えた。
「龍児君の、家の事です」
ぐ、と、須藤の気配が硬化したのが分かった。相槌をせず、黙り込んだ須藤の返事を暫く待ったが、百メートル進んでも、三百メートル進んでも一向に沈黙が晴れないので、もう一度、豪星の方から口を開いた。
「親父さん、龍児君、今、どうなってるんですか?」
「………」
「本当は、結構前からおかしいと思ってました、龍児君、家出だって、親父さんが言ってたじゃないですか、なのに、誰もその事に触れずに、ずっと、龍児君、親父さん達の所にいて」
「………」
「他人の事情だから、触れない方が良いって、思ってました、でも、さすがに、龍児君が親父さん達の家から学校に通い始めた時から、尋常じゃないと思って、あの、龍児君に、何が…」
「アイツはな、俺んちの息子になったんだよ」
それまで黙り込んでいた須藤が、強い口調で一息に言った。
怒っている風ではない、だが、とても真剣味を帯びている。
今度は豪星が黙り込み、次の言葉を唾を呑んで待った。
「養子と養親ってやつだな」
「養子…?龍児君が?」
「俺と沙世とあいつで、縁組みしたんだ、届けも役所に出してある」
「なんで…」
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