「豪星君も、将来、飲める口になっちゃいそうだねー?」

「もしそうなったら、猫汰さんの所為ですからね?」

「あはは、だろうねー!」

ひたすら、上手い、最高、と言い合っている内に、器の中身も杯の中身も、あっという間に無くなってしまった。

食べ終えた食器を置いて、さっさと席を立ち上がる。

珍しく、割り勘をして勘定を済ませてから、猫汰が楽しそうに階段を駆け下りて「次いこう!」と、元の道を勢い良く指差した。

豪星も、ふんわりした気分のまま、階段を軽い足取りで降りて行く。

二人で地面に戻り、また数分、歩いた所で猫汰が何かに興味を持ったらしく、足を止めた。ひょいと、手を上下に動かす。

その際手に取ったのは、お洒落なデザインの帽子だった。

店の周りでは、猫汰と同じように、皆がそれぞれ、気に入った帽子を手に取り、そこら中に配置された鏡を見ながら思い思いに試着していた。

…心なしか、女性が多いような。

「旅先の帽子屋さんって、なんかいいねー!」

「そうですね、…まわり、女の人が多ような、気のせいでしょうか?」

「え?気のせいじゃないと思うよ?今日、思ったよりも日差しが強いから、日焼けを気にした子が見にくるんだろうね」

「あ、なるほど」

「それより豪星君、帽子も折角だし、買っちゃう?」

普段、帽子を敢えて被る事が無いので、必要の無いものだったが、気づけば「良いですね」と、口が勝手に頷いていた。旅先の魔力、こわい。

店先に並べられた数多の帽子を、いくつも手に取った猫汰は、自分の頭、ではなく、豪星の頭に次々とそれを乗せ始めた。

うーん、とか、えっとぉ、とか、何度も唸りながら、最後に「これだ!」と高い声を上げて、気に入ったらしい帽子を豪星の頭にちょこんと被せた。

いそいそと、傍に設置されていた鏡を、猫汰がこちらに向けてくる。

…おお、凄い、流石猫汰だ。豪星でも、そこそこ見栄えのする帽子の選別がされている。

「やっべ超にあう…!俺の見立て最高!いや違う!ダッ…豪星君が最高なんだ!帽子が、最高を更に引き立てている…!」

「大げさですよ」

「そんなことない!かわいい!いやかっこいい!!感想が簡単になっちゃうくらい超にあう!豪星君!もうモデルになっちゃいなよ!勿論、俺専用の!」

「それ、雑誌になりませんよ」

「いいの!俺が全部買い占めるから!」

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