「…おい龍児、値段も可愛くねぇぞ」

「これがいい!」

「…いや、好きなの選んで来いとは言ったけど」

「これが、いい!」

「おい、あっちに似たようなので、もうちょい若いのあるぞ、なにも昇り龍じゃなくても、…星柄でいいんじゃねぇの?」

「やだこれがいい!」

「龍児、こういう服はな、お前がもうちょっと大人になってから…」

「大事にするから!お願い!」

暫くひっきつきながら攻防を続けていた二人だったが、龍児が何時もより高い声で、お願い!お願い!と連続した瞬間、須藤の動きがぴたりと止まった。

それから、顔を天井に向けて鼻の付近を手で押さえると、ぶるぶる、下から上まで震えた後。

「お願いされちゃしょうがねぇな!おい店員さん、これくれ!!」

鮮やかな身のこなしで龍児の服をうけ…いや、奪い取り、さっさとレジに向かうと、それと万札を勢い良く叩き付けた。

いらっしゃいませの、いの字もいえなかったお兄さんが、相手の剣幕に若干引いているのが見える。

お会計を済ませて、店のロゴの書かれた袋に入った服を須藤が龍児に渡すと、とても、とても嬉しそうな顔で龍児が笑った。

ついでに、須藤が輝かしい顔で相好をでろりと崩した。

…なんか最近、親父さん、龍児君にやたらと甘くないか?

「豪星!見ろ!」

なんともいえない気持ちになっていた豪星の目の前で、早速、店の袋から乱暴に中身を取り出した龍児が、まだ値札がついたままの服を被って、見てみて!と自慢げに披露を始めた。

まだ袖を通していない状態で見た昇り龍は、ただただ派手で受け入れがたいものだったが、元々この手の柄が似合う顔立ちをしていたのか、龍児が着てみると、中々良い取り合わせになっていて、素直に感心してしまった。

「おお、似合うね」と、零れた感想を、龍児が満面の笑みで受け止める。

「そういや豪星、お前の分はどうした」

暫く、買って貰った服をくるくる披露する龍児を三百六十度眺めていたが、その内須藤に豪星の分を尋ねられ、慌てて持っていたものを差し出した。

「ああ、すみません、俺はこれで…」

す、と、見せた服を、須藤がまじまじと眺めた。隣に居た龍児も、つられてまじまじと眺める。そして。

「なんだ、龍児に比べて随分地味だな」

「地味だな!」

「………二人とも煩い」

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