後ろから須藤も中に入ってきて、入口で適当にしているから、決まったらもってこいとよと言って、本当に適当な場所をうろうろとし始めた。

せっかく買ってもらえるのなら、きちんと選ぼうかなと、豪星は足を進めたが、龍児がじっとして動かないので、やれやれとその腕を引いて中心に連れて行った。

須藤の予想通り、豪星が腕を引けば、龍児も大人しく足を動かすようだ。

「服を選べとか言われても、欲しくもないものはよくわからん」

「うーんまぁ、俺も似たようなところあるから偉そうな事はいえないんだけど…あ、ほら、ゲームと同じと思えば良いんじゃない?」

「ゲーム?」

最近、特にご執心な龍児の趣味で物をたとえると、途端、龍児が眉間のしわを解いて、興味の浮いた顔で豪星を見つめた。

「うん、ほら、ゲームのお店とかいくと、色々ゲームが置いてあるでしょ?」

「おう」

「その中を見渡して、龍児君がこれ面白そう、これ好きそうかも、っていうのを見つけるじゃない」

「おう」

「それを、服でもやれば良いんじゃないかな?」

「………」

豪星のなげやりな説明を聞いた後、龍児が神妙な顔になって、から、豪星の元を離れ、向こうの棚へと消えていった。

恐らく、豪星の言ったことを早速参考にして、服を探しに行ったのだろう。この隙に、豪星も近くの棚を何個か見比べて、これが欲しいかも、という服を一着選んで腕に抱えた。

その内、離れていた龍児が豪星の元へ戻ってきた。そして、数分の内にご機嫌になった顔で、突然「あった!」と声を上げる。

なにが?と、尋ねる前に、ば!と、龍児が両腕で、選んで来たのであろう服を広げて見せた。

「……………お、おぉ、昇り龍のスカジャンか…」

ゲームのように選べば良いって確かに言ったけど、…服の種類がゲームのパッケージ並に派手だ。

高校生の感性とは思えないくらい派手だ。遊びで選びましたっていうレベルじゃないくらい派手だ。

しかし、龍児はそれがいたくお気に召したらしく、大変自信と期待の満ちた顔で、「これが、いい!」と、服のチョイスに念を押している。

豪星がなんと言っていいものやらと、言葉に迷っている内に、龍児がささっと駆けだして、それを須藤にも広げて見せた。

須藤が振り返って、お、やっと持ってきたか、みたいな笑顔を見せたが、龍児の服を見るなり、一瞬にして笑みを崩壊させる。

「…可愛く無い服選んできたな」

「これがいい!」

これ!これ!と、押しつけるように服を見せびらかす龍児と、その服を交互に見比べながら、須藤ががつんとため息を吐いた。

69>>
<<
top