なんとも子供らしい意見に盛大に突っ込みを入れながら、龍児の背を一端離れて、もう少し向こうにある売店まで一直線に走る。
いきなり走った所為で切れる息を、乱暴に胸を撫でながら抑え、目的の場所に辿り着くと、早速財布から小銭を取り出す。
メニューを三巡ほど眺めてから、「バニラアイスとオレンジジュース下さい」と、注文を甘味で統一した。
甘い物を食べれば気分が落ち着くという定説を、此処で試してみるつもりだ。
調理のいらない注文だったので、どちらも直ぐに豪星の手元に渡された。
それをもって再び駆け出し、先ほどと同じ格好で微動だにしない龍児の元へと戻る。
「りゅーじ君!」と叫んで、しゃがむと、飲み物の入った器を適当な場所においてから、ぐいと、無理矢理その顔を持ち上げた。
その顔は、鼻の頭まで真っ赤に染まっている。
その顔に、置いておいたジュースを突き出した。
「はい、これ飲んで、あと、アイス買ってきたよ、此処座ろう」
ぐずぐずになった龍児を起き上がらせて、近くの花壇の塀に座らせる。
まだ泣いていた龍児だったが、貰ったジュースをひとくち、ふたくち、みくち吸い込んだあたりで、漸くしゃくり上げるのを止めた。
ずずーっと、暫く、ジュースを飲み続ける音が響く。
「つめたい」
そう言ってから、なきべその顔を冷やすように、龍児が器の側面を頬に鼻の頭に当て始めた。
どうやら、ジュースは即効性のある泣き止め薬になってくれたようだ。
「オレンジ、うまい」
「よかった、これ、アイスも買ってきたよ、食べる?」
「ん…」
豪星の手から次にアイスを受け取り、表面の溶け始めた白いドームに、ぱくりと食いつく。
口を何度ももごもごさせた後、今度は、舌を小さく外に出して、咬み後を舐め始めた。
龍児にしては、大変ゆっくりと食べ進めている。
それを見ていると、豪星もなんとなく食べたくなってきて、食べ続ける龍児に断ってから再び売店に赴き、自分の分を購入して、龍児の隣に座った。
同じ味のするアイスを、豪星も、龍児と同じように食べ進める。
「うまい」
「うん、そうだね」
上の部分がほとんど無くなり、コーンの部分をかじっていると、近くの時計が大きな音を響かせた。
短針が一番真上の手前まで上った時計を座ったまま見上げて、時間の進みを確認する。
色々合間を挟んだ所為か、もう結構な時間に差し迫っていた。コーンを囓る早さを狭める。
「もう二、三個乗ったら親父さんたちと待ち合わせした場所に行こうね」
「おう」
「じゃあ、次何乗る?」
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