ゲラゲラゲラ!!友達が頭上で大笑いする声が聞こえる。
彼が此処まで声高らかに笑う姿は珍しいけれど、腰を抜かして地面に膝と肘がへばりついている豪星には、それをほほえましく見守る元気も気力もなかった。
一瞬だがしかし長すぎる恐怖体験から地に足を戻すと、情けなくもへたりこんでしまった。
ていうか、なにあれすっげぇ怖かったんだけど!!
以前龍児と小さい遊園地でジェットコースターに乗った時は全然平気だったし、本格的な絶叫久しぶりだけど以前は大丈夫だったのだから、どうってこと無いだろとか思ってたらそんな事なかった!
久しぶりに乗ると怖い!!大きい遊園地怖い!!昔より身体が重い所為かひゅっとくる感覚がすごく大きかった!すごく怖かった!小さい遊園地の絶叫なんて絶叫じゃない!!
ちなみに龍児は、上に引き上がったと共に腹の底から悲鳴を上げた豪星の声にツボを得たらしい。豪星とは違いぴんぴんとした様子で爆笑している。
「豪星驚き過ぎだろ!!」
「…うるさい!」
指を指して笑われている気配がする。多少むっとくるものの、やはりそれどころではなくて、土下座みたいな格好を何分も維持してしまった。
降りてから何時までも動かない豪星に、さすがに心配になったのか、げらげらと笑っていた声を潜めた龍児が、今度は「大丈夫か?」と、豪星の回りをうろうろし始めた。
その頃にはだいぶ落ち着いてきて、やっと、普段の力で半身を起こす事が出来た。
「うん、もう良いかも…でも、絶叫はひとつ空けて欲しいかな?」
「ん、わかった」
豪星の体調を気遣ってか、不服そうな顔を見せることなくあっさりと龍児が頷いた。
ごめんねとひとつ謝ってから、今の体調でも入れそうなアトラクションを、きょろきょろ、目視で探すと。
「あ、あれなんかどう?」
丁度、もう少し先に見えた建物に、立ち上がりがてら指を指す。
つられて視線を寄越した龍児が、豪星の指定した先を見て、―――ぎょっと目を剥く。
「…………おい豪星、あれはなんだ」
「お化け屋敷だと思うよ?」
豪星が、あっけらかんと答えるのに反比例して、ますます龍児の目が剥き出しになった。何度も、豪星と、向こうの建物を交互に見比べている。
「あれ、怖いやつじゃないのか」
やけに真剣に尋ねてくるので、今度はこちらが吹き出してしまった。
本物やホラー映画は豪星も怖いが、遊園地のお化け屋敷は見るからに張りぼて感が満載だ。
現に、出てくる客も、肩すかしを食らったような顔で出てくるのが遠目にも分かる。
何故かぷるぷると震え始めた龍児の手をつかんで、むこうの建物にまでぐいと引っ張った。
「あんなの作り物だって!それに龍児君、ずっと前に俺に守ってやるとか言ってたじゃないか、ね?ひとやすみがてら、入ってみようよ」
明るい声で向こうに誘う豪星を、剥き出しのままの目でじっと見つめた後、かくんと、おもちゃみたいな動きで「お、う」と、龍児が不安そうに頷いた。
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