暫くは、龍児が運転席に足や手を出すところを眺めていたが、その内、須藤が笑い声に、若干すねたような声色を混ぜて、何故か「豪星はずるいよなー」と、喋り始めた。

「なにがですか?」

「だってよ、なんだかんだでお前が一番龍児になつかれてるじゃねぇか」

「はい?えーと、そうですかね?」

「そうよ豪星君、もう龍児君は私達の息子なのに、ずるいわよぉ」

…………息子?

「だから、まえ、うるさい!」

「はいはい、…お、もう着くぞ」

喋っている内に目的地付近にまで近づいたらしく、次の分岐路で須藤が高速道路から公道へと車を下ろした。

そこから、数分も走らない内に、大きな駐車場が窓から見えてくる。中にまで入り込むと、その中のひとつに須藤が車を停めて、「ついたぞー」と、内鍵を全て外した。

運転席から、助手席から、後部座席から、一斉に車を降りる。晴天の下、おびただしい量の車がコンクリートに並べられている様は、中々壮観だった。

駐車場を眺める豪星とは打って変わり、龍児は、園の塀から突き出て見える、背がとても高いジェットコースターを眺めるのに必死なご様子だった。

四人で、入り口まで続くポートの下を歩き、チケット売り場で大人二枚、学生二枚分(須藤が全部奢ってくれた)の入園、乗り物フリーパスポート券を購入すると、ぐるぐる回る鉄棒のついたゲートを進み、広々としたエントランスにまで入った。

「すげぇ!」と、大きく叫んだ龍児が、先導して前を走っていく。

こんなに大きな遊園地に遊びに来るのは久しぶりだったので、豪星も、龍児に続いて小走りで中に入っていった。

その内、須藤に「おおい」と呼ばれ、踵を返す

「お前ら二人で暫く好きなところ回ってろ、俺らは俺らで好きに見てるから、昼飯は一緒に食いたいから、十二時になったら、あの大きい舟の下で待ち合わせって事にしておこうや」

「わかりました、じゃあ、お昼までいっぱい遊んできますね」

須藤が、至極、幸せそうな顔で豪星の頭をなでてから、沙世と並んで別の方向へと歩き始めた。

向こう側は園内と隣接したショッピングモールに繋がっているので、二人で買い物でも楽しんでくるつもりなのだろう。

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