「けど、こんなにおいしいおかゆ作れるなんて、凄いなぁ、案外、料理人とかなれるんじゃない?」
「そ、そんなでも無い…」
「照れなくて良いよ、おいしかったって、俺、全然料理出来ないからさ、…でも、龍児君が色々出来るようになっちゃうと、俺、いつまで龍児君に年上みたいな顔してられるかな」
とりあえず、料理はもうアウトだな。と、苦笑する。
けど、実際の歳の差などふたつしか変わらないのだ。今は、あらゆる事を龍児に教えている自分だが、遠くない何時かに、龍児の方が何でもそつなくこなす日が来るのかもしれない。
背も、豪星の方がまだ高いが、一年生でこの高さとなると、そのうち抜かされそうな気もするし。
色々な思いに、うーんと考えを巡らせていた豪星を、じっと眺めていた龍児だったが、合図もなく、すくりと立ち上がると、何故か豪星の背後に移動した。
そして、背中をくっつける形で座り込む。唐突で不思議な行動に振り返ろうとしたが。
「ずっと」
「うん?」
「ずっと、してていいんだぞ」
「…………うん」
大事に大事に、噛みしめるように告げられた言葉に、龍児のあどけない気遣いが見えた気がして、ぎゅっと、胸の内が温かくなった。
発症が早ければ直りも早い風邪だったらしく、薬を飲んで一晩眠ったら、多少違和感を覚える程度まで体調は改善された。
朝の五時に目が覚め、用を足して戻ろうとしていた所を、朝の早い須藤夫妻に見つかり、あれやこれやと布団に戻され、何度目かの体温計を脇に挟まれる。
昨日の高熱とは打って変わり、平熱といえるまで下がった体温計の画面を、いつの間にか起きていた龍児も加わりながら、全員でほっと眺める。
これでもう遊びにいけますね。と、肩の荷が下りたように言った豪星に、須藤がすかさず「ダメだ」と却下する。
病み上がりで直ぐにぶり返したらどうするんだと、もっともな事を言われ、その日は大事をとって、一日布団の中でごろごろと過ごす事になった。
ごろ寝をしていた布団の中で、ふと、ちゃんと遊びにいけるといいなと考えた。なにせ、大きな遊び場に行けるのは久しぶりだったので、ごうせいなりに楽しみにしていたのだ。
少し前までは、遊園地なんて。と考えていたくせに、どうも最近、龍児の気が少し移ってきたように思う。
でも、それは多分、一緒に行きたい友人が居るからだろうとも思う。豪星の感じていた「遊園地なんて」とは、ただの味気無い記憶の事だったのだろう。
ぼんやりしながらひたすらごろごろしていると、布団の上からぺちぺちと、誰かが叩いてきた。この感じは、恐らく龍児だろう。
顔を上げると、予想通りのつり上がった猫目が、じっとこちらを見下ろしていた。その手には、ゲーム機のハードとソフトの入った箱が握られている。
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