…大丈夫じゃなかったなと。木目の浮かぶ天井を見上げながらぼんやりと考える。

その周りでは、うろうろ、うろうろ、龍児が円を描くように彷徨っている。

何度も、布団に入った豪星を見下ろしては「大丈夫か?」とか「なにかしてほしいか?」とか、確認を迫ってくる。

綿と綿に挟まれながら、豪星はふるふると首を振った。なにをしてほしいかと言われれば、まずはそっとしておいて欲しいのが正直なところだ。

先ほど計った体温計が示した熱は40度だったらしい。どうやら、完全に、猫汰の風邪を貰っていたようだ。

多少くしゃみをしていたので、猫汰の風邪を貰っていたかもしれない事には感づいていた。

しかし、まさか、須藤たちと出掛ける予定の日に、車の中で突然動けなくなるとは思いも寄らなかった。

その日になるまで、少し違和感を覚えるくらいの不調だったので、まさか熱が出ているとは気づかなかった。風邪って、潜伏する事もあるんだ。初めて知った。

結局、高速道路に乗る前に引き返し、あれやこれやと布団に重ねられ、皆で須藤の家に待機する羽目になってしまった。

みんなで楽しみにしていた日だったのに、ごうせいの迂闊さの所為でぶち壊しも良いところだ。非常に申し訳無いことをしたと思う。

龍児と言えば、家に引き返してきたなり、豪星の周りをこうしてぐるぐる彷徨い続けている。

よほど容態が心配なのだろう。ちょっと落ち着いて、とは、身体がだるすぎて言えなかったけど。

ああ、しかし、本当に億劫な気分だ。貰っても良いだなんて、かっこつけてタカを括った結果がこれとか、我が事ながら笑えない。

今度もし、誰かを看病することがあったら、自惚れないでちゃんとマスクをしていよう。

ちなみに、龍児の口には沙世の計らいによりマスクがかけられている。迂闊な自分とは大違いだ。

「豪星…大丈夫か?」

本日何度目かの大丈夫?を尋ねられ、また、弱々しく首を振る。

正直首を振るのも億劫なのだが、一向に、りゅうじが退散する気配がしない。これ、気絶するまで繰り返さないとダメかな…。

そんな事を考えていると、向こうの襖(歩く力が無かったので、二階部屋ではなく居間に寝かされている)がすらりと開き、沙世が入ってきた。

意識が朦朧としている豪星の傍で膝を折り「お薬飲める?」と尋ねてくる。

こくりとうなずき、半身を起こそうとして失敗した豪星の背を、龍児が、そっと、壊れ物に触れるような手つきで支えてくれた。

「一応果物も持ってきたけど、食べられないかしら」

「すみませ…」

「ああ、いいのよ、食べられないならそれでも良いから、じゃあ先にお水を飲んで、お薬飲んで、もう一回お水を飲みましょうね」

「は…い」

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