猫汰が休んではや二日目。今日は見舞いに来なくていいよと遠慮された代わりに、返信しなくても良いからとお願いされ、朝から頻繁にメールが届いていた。
今お水を飲んでるとか、今カーテンを開けたよとか、おかゆで舌を火傷したとか、まるで実況中継のようだ。
授業を受け、休みおきにメールを確認(偶に返信すると、ダーリン律儀!大好き!と返ってくる)するという、変なリレーを繰り返している内に昼を迎えた。
一旦携帯の電源を落とすと、先にコンビニで買っておいたおにぎりとパンを机に並べる。
一番はじめに、コロッケの挟まったパンの袋を手で裂くと、中身を取り出し、あ、と、口に頬張ろうとする、が。
「豪星!今度のやすみ!」
その時がらりと教室の扉が開いた。教室中が、いきなりの声にびくりと振り返ったが、豪星は声だけで判別がついたので、ゆっくりと顔を向けた。
「龍児君、どうしたの?」
「やすみ!」
りゅうじが大きな包みを持って豪星に大股で近付いてくる。なにやら興奮している様子だ。
空いていた机を勝手に借りて豪星の机につけると、いそいそ、包みをはぎ取りながら、もう一度「やすみ!」と叫んだ。
相変わらず主語が飛んでいるので分かりにくいが、何かを伝えたいという意思は伝わる。
「何時のやすみ?」
「長い奴!」
「今度のゴールデンウィークの事かな?それがどうかしたの?」
「なにいってるんだ!約束しただろ!」
「え?…あ!そういえばそうだったね、ごめんごめん!」
こくこく!と、意思の疎通に成功した龍児が嬉しそうに頷く。
そして、開いた包みの中に隠れていた重箱に似た弁当の蓋を開け、中に入っていた特大のからあげを頬張る、寸前。
「おっきい遊園地行こうぜ!」
『いや、龍児がな?この前とんでもなく切羽詰まった顔で、何でもするから金をくれとか言い出すもんだから、なんだと思ってよ』
「はぁ」
『何でもするなら理由を教えろって問い詰めたら、なんでもお前等、今度のゴールデンウィークに遊びに行くらしいじゃねぇか』
「はぁ」
『言ってくれれば車も小遣いも、いくらでも出してやるってのに、水くせぇよなー?』
帰宅するなりかかってきた須藤の電話は、声があからさまにふてくされていた。
まるでのけ者にされた子供のような様子に、どう答えていいか分からず、返事が雑になってしまう。
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