下校時刻過ぎ、部活動に精を出す同級生や後輩たちを横切って、豪星は校門から何時もと反対の方向を曲がった。
暫く歩くと、途中で見つけたコンビニエンスストアに立ち寄る。
ひやりとした空調の中、籠を持ち、その中に、スポーツドリンクやゼリー、栄養剤などを次々に放り込んでいく。
一応、見舞いが長引いた時用の食事分も詰め込むと、そこそこの量になったソレをレジの会計に通し、再び、ドアを潜って熱気孕む外気に肌を添わせた。
コンビニから歩いて然程経たない内に、目的地である猫汰のマンションに辿り着く。
豪星が暮らすこじんまりとしたアパートとは違い、背の高い、真新しい外壁のマンションが、ひび割れた道路の真横に立つ様は中々壮観である。
意味も無く見上げている内に、そういえば、此処に来るのは久しぶり、というより、二回目であることを思い出した。
初めて猫汰と出会ったあの日、介抱されたのか厄介になったのか分からない衝撃的な出会いから早一年が経とうとしているが、その間、此処に来る事はほとんど無かった。
何時も猫汰が、豪星の方へ入り浸るのが常だったからだ。
そういえば、中がどんな風だったかも、ほとんど覚えていない。
中に居た管理人に事情を話し、猫汰になんとか繋いで貰うと、エレベーターに乗って猫汰の部屋へ向かった。
鍵など持ち合わせていないので、ノックと呼び鈴で中の所在を確かめると、直ぐ、インターホンの向こうから、「はあい…」と、気だるげな声が流れてきた。
それはさながら、玄関まで歩くのも辛いと、声無く言っているようなものだった。見舞いにきたつもりで、病人に億劫な思いをさせてしまったらしい。
中に入って直ぐに謝ろうと思ったが、肝心の、中に入った所で、猫汰がへたりこんでいるのに気づき、慌ててしゃがみこんだ。
「猫汰さん、大丈夫ですか!?」
「…だーりん、お見舞い来てくれて、ありがと…」
「立てますか?今肩を貸しますから」
「…だめ」
しゃがんだ体勢で、猫汰の腕を持ち上げ肩に乗せようとした豪星の身体を、猫汰がいやいやと止めた。
気分が悪くて動けないのだろうと思い、もう少し、相手が楽な体勢で運ぼうと試みたが、それもいやいやと振るわれ困ってしまう。
病人を玄関に置いておくのは不味い。一歩も動かぬまま、こんな所で身体を冷やしてしまうのはもっと不味い。
せめて何か、毛布でも取ってこようと思い、その確認を猫汰に強請ったのだが、それも「だめ」と断られた。
流石に困り果てた豪星だったが、突然、豪星の手を借りずに立ち上がった猫汰が、ぐいぐいと豪星の背を押し始めたので面食らってしまう。
「ど、どうしました?あ、吐きそうなんですか?だったら暫く後ろ向いてますから…」
「ちがうの、気持ち悪いとかじゃないの」
「え?じゃあ…?」
「ちがうの、お見舞い、嬉しいけど、もう帰って」
「ええ…?」
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