「僕たちは龍ちゃんのおバカさに運命を感じてね、これは友達にならねばとその日に口説いて、次の日から龍ちゃんであそ…龍ちゃんと良く遊ぶようになったんだよね!」
「そうそう!想像通り超楽しい…うわっと!!」
それまで、二人に押さえ込まれていた龍児が、隙をついて振り払い、片手ずつ彼らの胸倉を掴んで持ち上げた。
龍児よりも背丈が少ないとはいえ、そこそこ重さのありそうな男二人が、龍児の力で宙に引き上げられる。
ふぅ、ふぅ、と、鋭い目つきで二人を下から睨む龍児の雰囲気は、何時にない剣呑さを帯びていた、が。
何故か、二人は苦しい体勢で持ち上げられているにも関わらず、げらげらと笑い始めた。
「やっべ、龍ちゃん、見晴らし超良いんだけど、これ自分の背が高いアピール?それだけしか自慢がないなんてやっぱり馬鹿だね」
「………!」
「なに涙目になってるんだ?悔しいの?返す言葉もないなんてやっぱり馬鹿だな」
「ば、ばかじゃな…」
「ねぇ、そういえば次の授業の課題どうしたの?昨日全然答えられなくて、明日も当てるって、先生に言われてたよね?やったの?やったけど分からなかったの?もしかして昼休みが最後の砦だったの?」
「………っ!」
「なにか言えよ、龍児」
「うわぁああああん!!」
二人の胸から手を乱暴に離すと、龍児は悲壮な声を上げて購買から飛び出していった。
その姿を、三人で茫然と眺めてから、くっく、と、双子が、笑いを噛み殺し始める。
「あー、龍児可愛いな」
「けど、苛めすぎちゃったかな?」
「あそこまでやるのが可愛いんだよ」
「分かる分かる」
…成程、龍児が言っていたいじめとはこの事か。
けど、悪戯心はあっても、他意と害はなさそうだ。
「あの、二人とも、龍児君、あんな風でも結構デリケートだから…お手柔らかにね?」
一応、龍児のフォローを入れた豪星に、双子が振り返ってきょとんとした顔を見せた。
それから、年下らしい、無邪気な笑顔を浮かべて、もちろんですよと、お互いの手を打つ。
「よし、じゃあ仲直りにパンでも買ってってやるか、さっきのあんぱんじゃ足りないだろあいつ」
「龍ちゃん凄い食べるからたくさん買ってかないとね」
「二限で、重箱みたいな弁当ぺろっと食べ終えてる時あるもんな」
「この前、購買で、パンを買い込み過ぎで財布を下に振りまくってる龍ちゃん見たよ、財布を振ってもお金は出てこないのにね」
「あいつほんと、ばかわいいいよな」
ばかわいい…。新しい表現だな。
「じゃあね先輩!また会ったらお喋りしましょ!」
「じゃあね!」
「はーい」
…うーん。
ちょっと癖があるけど、悪い子たちじゃないみたいだ。
なにはともあれ、彼にも友達が出来たみたいで、一安心、かな?
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