漸く結びついた目前の関係性に、ぱんと手を打つが、途端、龍児が「そんな訳ねぇだろ!!」と、歯を剥き出して反論した。

その肩に、両方から少年たちが腕を出して組み始める。ぐえ!と、龍児が苦しそうにうめいた。

「なに言ってるの、僕たち友達じゃないか」

「そうそう」

「席が隣だっただけだ!」

「龍ちゃん、照れなくていいんだよ」

「照れてねぇよ!」

「まあまあまあ」

丁度、近くにあったパイプ椅子に龍児を引っ張って座らせると、また両方を陣取って、けんじ、の方が「先輩、龍児の友達?」と、軽い口調で尋ねてきた。

その軽さに、若干どきっとしてしまうが、平静を保って「うん、そうだよ」と、無難に応えておく。

「そっかー!先輩、俺たちも龍児の友達なの、よろしくね?」

「ちげーって言ってるだろうが!離せ!」

「そうそう、僕たち似てないけど双子なの、僕がへんじ、あっちがけんじ、変人賢人、なんてね?名前だけは似てるでしょ?」

…そういえば、噂で、今年は双子が入学してきたと聞いたような。

然程興味が無かったし、すれ違いはするだろうが、近距離で会う事は無いだろうと思っていたのだが、今後というのは何時になっても分からないものである。

「はなせー!!」

「まあまあまあ!」

じたばた暴れる龍児を二人がかりで抑え込む双子は、どうやらそこ抜けて気質が明るい様子だ。

しかし、龍児と友達になるには水と油な気もする。

一体どうやって知り合ったのかと、思いついた疑問の答えを、早速豪星に矛先を変えてべらべらしゃべり始めた双子が、直ぐに披露し始めてくれた。

「いやいや聞いてよ先輩、俺たちと龍児が初めて喋った日の事を」

「お前それ、何回ひとに言う気だ!」

「まぁまぁ龍ちゃん、いやそれがね先輩、これが超面白くて」

「面白くねぇよ!大体お前等と友達じゃな…もごもご!」

「煩いよ龍ちゃん、ちょっとあんぱんでもかじって黙ってて」

おお、あんぱんを口に突っ込まれたまま抵抗してる。しかもちゃんと食べてるし。器用だな。

「それがね?先輩、授業が開始した日に、龍ちゃん現国で朗読を当てられたんだけど、そのとき教科書を取り出して…、ね、なにしたと思う?」

「なにをしたの?」

「さかさまに掴んで読み始めた」

…おっと、何だか凄く想像がつくぞ。

意気揚々と教科書を取り出して、なんの疑問もなく、さかさまに持って、読み始める龍児の姿が。

「で、龍児ってば、ある程度読み終わった後に、凍り付いてる教室のど真ん中で、…すげぇ!高校生の国語ってこんなに難しいのか…!って、一人で叫んでるのを見て、やっべ!こいつ馬鹿じゃね!?…じゃなくて、面白いなってつぼっちゃいました!」

「………ははは」

40>>
<<
top