決死の思いで告白した!みたいなその言葉を、豪星が理解と共に飲み込む前に、購買の出入り口の方から「りゅうちゃーん!」「どこだー!」と、種類の違う声が、がやがやと入り込んできた。
声量が大きい所為か、購買の中でひときわ目立っている。
購買の出入り口に目を向けると、顔立ちの未熟さが際立つ、あどけない雰囲気の二人組が、パンやおかしの上をきょろきょろと眺めていた。どうやら一年生のようだ。
昼食を買いにきたというよりは、なにか探し物をしている様子だ。
そういえば、さっきりゅうちゃんがどうとか…。
不意に、背後の龍児がびくりと震えた。それと同時に、二人組の片割れが、こちらに目線を寄越し、何故か、とても楽しそうな顔で近付いて来た。
明るい髪を肩の上まで伸ばした少年は、にっこり笑って「どうも、先輩」と豪星に会釈をすると、後ろのくぼみにはまり込んでいた龍児に手を伸ばして「みつけた!」と、喜色くはしゃいだ。
「へ、へんじ…!」
彼に肩を掴まれた龍児が、この世の終わりを見たような、絶望した声を絞り出す。
へんじ、と呼ばれた少年は、今度は龍児の腕を掴んで、ぐいぐいと外に引っ張り始めた。
それに抵抗を見せる龍児が、途中、豪星の服を掴んで重しにし始める。まるでカブを抜く絵本のような形だ。
「りゅうちゃん、捕まえたから鬼ごっこもう終わったよ?いい加減出ておいでよ」
「そんなんやってねーし!!」
「お、何々?龍児見つけた?」
向こう側に居たもうひとり、頭に布を巻いた少年もこちらに近寄り、龍児の腕を引っ張り始めた。
二人とも、龍児よりも背が低い(というか、多分、龍児が歳の割りに背が高い、ひとの事言えないけど)ので、まるで子供にたかられているようだ。
しつこく龍児を引っ張っていた二人だったが、その内、龍児が豪星から手を離し、ついでに、二人の腕を思い切り振り払った。
「やめろ!」と、目元を染めて龍児が怒鳴る。
「いい加減にしろ!へんじ、けんじ!」
似たような名前を叫ばれた二人は、お互いの顔を見合わせると、「えー?」と、笑って首を傾げた。
「なに怒ってるの?意味わかんない」
「そうそう、昼短いんだし、早く次遊ぼうぜ」
「何が遊ぼうだ!お前等が俺で遊んでるだけだろ!」
「…あ、龍児君、もしかしてお友達?」
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