「いやしてません、布団でもありません」

「で、でも…っ」

「あの、猫汰さん、学校の時から何度も言ってますけど、俺と龍児君は唯の友達ですし、猫汰さんが心配しているような事も、今後一切ありませんから」

此処に来る数時間前、龍児と猫汰が初めて対面した後、猫汰は散々豪星と龍児の仲を疑ってかかってきた。

龍児と自分が、あらぬ仲ではないかという事についてだ。

そんな目で見たことも無いものに、そんな疑いをかけられるとはつゆ程にも思っていなかったので、とんだ猜疑をかけられたものだ。

しかし、どれだけ否定しても、猫汰は追って電話をかけてくる程、疑うのに必死なご様子だ。

「ダーリンがその気じゃなくても、あっちがどうかは分かんないじゃん!」

「だから、そんな事は…」

「もし、近くで寝てる振りして、ダーリンに色目を使う機会でも狙ってたら…っ」

「…しつこいですよ!違うって言ってるでしょ!?」

穏便に説き伏せる段階を等々蹴飛ばし、苛立ち交じりに叫んでしまう。

言ってからハッと我に返ったが、電話の向こうは静まり返った後だった。

気まずいけれど、電話も切れず、数分、お互い黙り込んでいたが、その内、猫汰がか細い声で「だって」と繋いだ。

「ダーリン、なんか、何時もと違った」

「え?」

「友達って言ったって、原野君とか、あんな風に接しないじゃん、もっと、なんか、キョリとってるみたいな、そんな感じなのに、あの子だけ、凄く嬉しそうだった」

「………」

確かに、龍児が他の友人と比べれば、多少扱い方が違うのには思う所がある。

元々引っ越し族だった所為で、自分への傷を少なくするための処世術が、それを浮き彫りにして見せたと言われても、分かる気がする。けれど。

「…そうだとしても、それは別に、猫汰さんが疑ってるような事とは関係無いじゃないんですか?」

曖昧ながらも反論すると、豪星の言い方に驚いたのか、電話の向こうで猫汰がひくりと息を呑んだ。

それから、また少しだけ黙り込んだ後「ふぅん」とふてくされた声で呟く。

「そうだと良いけどね」

「あ、猫汰さ」

豪星が話を続ける前に、猫汰の方から一方的に通話が切れてしまった。何時にない、あからさまに冷めた声に、心臓が少し跳ねてしまう。

その直後「ごうせー?」と、向こうで転がっていた龍児が膝立ちのまま近付いてきた。

鼓動の早くなった豪星の服を、下からくいと引っ張ってくる。それを見下ろした時、なんとなくほっとして、咄嗟にその手を掴んだ。

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