一年で一番短い季節の連休は、豪星が瞬きをしているウチに、あっという間に過ぎ去って行った。

今では、葉の茂った桜を教室の窓から眺めてあくびをかいている。

休みは終わっても、春眠の気配はまだまだ長引きそうだ。

豪星が覗いている窓の外、下では、入学を終えたばかりの新入生らしき生徒たちが、大きめの制服で動き回りながら、新芽のような目つきで、校内を友人と共に見渡している。

豪星も、一昨日くらいから三年生になったばかりだが、つい二年前までは、彼らと同じような立場だったなぁと、ふんわり考える。

その背に「ダーリーン!」と、猫汰がとびかかってきた。三年生になっても、彼とは相変わらず、同じクラスだ。

「何見てたの?」と聞かれたので、一年生ですよと答える。

同じく、窓の下を覗き込んだ猫汰が、「浮き浮きしてて可愛いねぇ」と、ほがらかに、自分の二つ下…否、三つ下の一年生を、桟に頬杖をつきながら眺めた。

「あ、ダーリン、今日は半休だし、帰りに何処か遊びにいかない?」

「え?ああ、すみません、俺、今日は昼から用事があるんです」

「そうなの?」

「はい、ちょっと、友達の家に…」

理由を言いかけた時、教室の外から「ごうせいー!」と、原野(原野も同じクラスだった、これで三年連続だ)の声がした。

振り返ると、廊下を親指で指した原野が、「隣のクラスの先生が呼んでるぞ」と、あちらに向かうように促してきた。

うんと頷き、猫汰を置いて廊下に向かう。

廊下に出ると、教師が出入り口付近で待機をしていた。

廊下側に顔を向けた教師に「中嶋です」と尋ねかけると、振り返った教師が、直ぐ、「あれ?」と首を傾げた。

「あ、お前の方が来ちゃったのか」

「どうしました?」

「いや、ごめんごめん、お前じゃなくて違う中嶋に用があったんだよ、悪いな」

呼びに行きましょうか?と進言したが、中嶋がもう二人教室に居るので、誤認を防ぐため自分で行くと断られた。

教師はもう一度豪星に謝ってから教室へ入って行った。

用事の無くなった廊下にぽつんと立っていたが、その内、自分も教室に戻ろうとする、時、カタン!と、遠くから、床を何かで叩くような音が聞こえた。

きょろきょろ首を回すと、渡り廊下の少し手前で、豪星と同じく辺りをきょろきょろとしている生徒の姿を見つけた。

靴の色と雰囲気で判断する限り、どうやら一年生のようだ。

一年生は、一度止まって、足元から柄の長い箒(どいやらそれが落ちた音だったらしい)を拾うと、再び辺りを、きょろきょろ、うろうろ彷徨い始めた。

もしかしたら、校舎の場所が分からず迷っているのかもしれない。

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