「なんかね、凶を引いた人は別の場所に縛って下さいって、書いてある」
「…あ、本当だ」
「あっちみたいだね、行ってみようか」
看板に書かれた簡易な地図に沿って移動すると、本殿の傍で、社務所の近くと同じような納め所が作られていた。
隣には、でかでかと「凶の納め所」と書かれている。
「此処に縛り付けておけば良いんでしょうか」
「みたいだねー、…お、此処に縛っておけば、凶が吉になるって書いてある、ふーん?縛っておこうか」
「はい」
周りの雰囲気に反し、此処だけ賑わいの無い納め所におみくじを縛って直ぐ、猫汰がちょいちょいと手招きしてきた。
何事だと近づいた豪星の腕を、ひょいと掴んだ猫汰が、何故か先ほどの社務所に戻っていく。
そして「おみくじください」と、再び硬貨を、二枚とり出した。
吃驚しているお姉さんを置いて、猫汰が勝手に筒を振って、棒を落とす。
同じく、吃驚していた豪星に無理矢理、筒を持たせて棒を落とさせると、それをお姉さんに見せて紙を強請った。
我に返ったらしい相手が、慌ててタンスから紙を取り出し、猫汰と豪星に一枚ずつ渡した。
ソレを開いた猫汰が、わ!と嬉しそうな声を上げた。
「末吉になった!豪星君は?」
「…俺も末吉です」
「おそろいだ!ね、本当に吉になったね!きっと、この神社、ご利益がいっぱいあるんだよー!」
「…猫汰さんって、ポジティブですよね」
「え?そうかな?」
豪星の感性では、到底出来ない事をやってのけた本人が、まるで分かっていない様子を見せるので、何だか笑えて来てしまった。
耐え切れず「あはは」と声を出して笑うと、猫汰がすかさず。
「豪星君、今の笑いかた超可愛かった、もういっかい笑って、写真撮らせて、あと、やっぱり雑誌を作ろう?」
「…うーん、検討します」
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